盛土をして造成した土地の家は傾きやすい?

家が傾いてしまう原因の一つとして、「盛土」による不同沈下(不等沈下とも呼ばれる)があります。
不同沈下とは、家全体が均等に沈み込むのではなく、家の片側一方が斜めに沈んでしまう状態のことを言います。
不同沈下によって家の傾きが生じると、建物へのダメージはもちろん大きいのですが、傾いた家に住んでいる人の人体にも影響を与えてしまうことがあります。
原因不明の体調不良や、疲れが取れないなどの症状は、家の傾きによるものかもしれません。
それではどのような場所に盛土が使われるのか、盛土の上に建てられた物件が家の傾きを防ぐにはどのような対策をしたら良いのかを見ていきましょう。
また、傾いてしまった家を直す工事の費用などもご紹介していきます。
家の傾きの原因となる「盛土」とは?
盛土(もりど)とは山や丘などの傾斜地に建物を建てる際に、土を盛って平らな敷地をつくることです。
傾斜地の他に、田畑や沼地、海岸などを埋め立てて盛土をしたり、もとから平らな土地に高さをつけるために盛土が行われることもあります。
文字通り土を盛って敷地を造成するため、盛土によってつくられた土地はどうしても軟弱地盤になりやすいのです。
「盛土」は土を盛って敷地をつくるのに対し、もともとあった土を削り取って土地をつくる「切土(きりど)」という方法もあります。
切土で土地を造成する方法なら、もともとの地盤に強度があればそれほど地盤沈下の問題はないでしょう。
盛土をした場合は地盤が弱いため、重機などで地盤を固める「締め固め」という作業が行われます。このような作業によって時間をかけて地盤を強化するのです。
締め固めをしても地盤が弱い場合は、更なる地盤改良工事が行われます。
しかし、地盤強化の工事が不十分だった場合、次第に建物の重さに耐えられなくなって地盤沈下が起こり、家が傾いてしまうことがあります。
特に地震によって建物が左右に揺れると、地盤が建物の重さに耐えられなくなってしまい、傾きが起きてしまうのです。
大きな地震が起こった時は、盛土に建てられた家が傾いたり、倒壊するリスクは高いでしょう。
実際に阪神大震災では、盛土に建てられた家屋の倒壊が多く報告されました。
そのため2000年以降には事実上、地盤調査や地盤の改良工事が法律的に義務化されています。
盛土をして造成されている可能性のある土地は、山や丘などの傾斜地、昔は田畑や沼地だった場所です。
その地域の役場、役所の「宅地課」「建築指導課」等に尋ねると、昔はどんな土地だったのかを知ることができるでしょう。
一般的に、湿地を示す「谷」が入る地名であったり、川や沼などの水辺が近くにあるような土地の地盤は弱い傾向にあります。
盛土や、もともと軟弱地盤であったとしても、しっかりと地盤の締め固めや地盤改良工事が行われていれば問題ありません。
良い盛土と良くない盛土
盛土には土砂以外のものが混ざった状態でつくられているものもあります。
盛土に使用される材料や施工方法によって、盛土の質にかなり優劣が生じてしまうのです。
盛土の中に、建設工事の残材や産業廃棄物、ゴミ、岩などが混ざっているものは良くありません。
このような雑多なものでつくられた盛土は地盤が非常に不安定な状態で、著しい不同沈下を招く恐れがあります。
また、盛土の転圧にバラつきがあり、均一に整備されていない場合も不同沈下を招くことに繋がります。
盛土をした場所が、水田や沼地などの軟弱地盤だった場合も注意が必要です。
もともとの地盤が弱いと、自重によって地盤沈下を起こしやすいのです。
では、宅地に適した良い盛土とはどのようなものなのでしょうか。
まず、工事の残材や廃棄物などの異物が混ざっておらず、粒度分布の砂質系の材料が使われていることです。
そして締め固めや均一な転圧作業がしっかりと行われ、強度確認などの品質管理がされていることが重要です。
地盤調査の一つとして土の強度や締まり具合を判定する「スウェーデン式サウンディング試験」というものがあり、この調査で沈下しないことが確認されれば問題ありません。
また、盛土が擁壁で囲まれていると雨水が排水されにくく、漏水したり、宅地面の地表に水が混じって泥になってしまうこともあります。
漏水を防ぐために盛土を囲っている擁壁に水抜き孔が配置され、適切な地表勾配になっていることも良い盛土の条件です。
地盤改良工事などの対策をしていたり、台風や大雨を経験しているということもポイント。家の傾きは盛土の状態に起因することも多いため、家を建てる際は盛土に関しても留意しておきましょう。
これから家を建てる予定がある方、自分の家が盛土の上に建っているかもしれないという方は、地盤調査をし、必要があれば地盤の改良工事を行うことをおすすめします。
盛土の地盤改良工事には、盛土にセメント系固化材を混ぜて固める改良方法があります。
本来盛土は時間をかけて締固めをするのですが、ハウスメーカーでは盛土をしてからすぐに家を建てることを前提としているので、この場合は盛土をセメント系固化材で固める改良が必要になります。
家の傾きを自分でチェックしてみる
家の傾きが15ミリあると頭痛やめまいなどの体調不良が現れることがあり、30ミリ以上の傾きがあるとドアが勝手に開いてしまう現象が現れます。
傾きが60ミリを超えると、建物に大きな負荷がかかっている状態と言われ、傾きを放置すると建物が崩壊する恐れが出てくるので非常に危険です。
中には家の傾きに慣れてしまい、最初は違和感や体調不良があったけれど、慣れてしまって違和感を感じなくなったという人もいるのです。
また、傾いた家に住んでいた子供が何もない所で転ぶようになったという事例もあります。
家が傾いている状態を放置すると平衡感覚が取れなくなったり、体調不良になったりと、何らかの問題が出てきますので、慣れたからといって放置するのは良くありません。
慢性疲労や頭痛、特定の場所でめまいがするなどの症状があれば、家の傾きが原因である可能性があります。
家が傾いているかを簡単にチェックするには、ビー玉を転がしてみたり、ドアや窓の開閉がしにくくないかを確認してみてください。
もしもドアの開閉がスムーズにできない、歩くと床がきしむなどの症状があれば、傾いている可能性があるので対策が必要です。
また、壁紙、タイル、家の基礎にひび割れがないかを確認することでも判断できます。
自分で家の傾きをチェックするには、スマホのアプリを利用するのが手軽でわかりやすいかもしれません。
傾斜を測るアプリを起動し、気になる箇所にスマホを置くだけで傾きがわかるのです。
アプリは無料のものも多くあるので、ダウンロードして測ってみると良いでしょう。
iPhoneでは傾斜を測る「水準器」が内蔵されています。
ios11以前の水準器機能は「コンパス」アプリの中にあり、ios12以降では「計測」アプリに水準器機能がついています。
スマホのアプリでも簡易的に傾斜を測ることはできますが、家の傾きを詳しく調査するには、やはり専門業者へ依頼したほうが確実です。
一般的に、家の傾き調査を業者に依頼するとなると、およそ5万円~10万円が相場なのですが、レフトハウジングでは部屋の隅々までミリ単位の精密診断ができるレーザー診断、レーザー測量を無料で行うことができます。
家の傾きは決して放置してはいけない問題ですので、早めに調査しておくことが得策です。
地盤調査はしっかりしておこう
これから家を建てる場合は「盛土」についても注意しながら土地を探してみることが大切です。
水田や沼地といった軟弱地盤に盛土をしているところはできるだけ避けた方が無難でしょう。
しかし、盛土だからといって全てがダメなわけではありません。盛土でも砂質系の優良な材質が使われていて、締め固めや地盤改良などの対策がしっかりと行われていれば問題ないのです。
住んでいる家が盛土の上に建っているという場合は、家の傾き調査をし、不安があれば地盤改良工事を行うなど対策をすることで、この先も安心して暮していくことができます。