知らないと怖い地盤沈下の主な7つの原因
地盤沈下が発生すると、その上に建っている建物は傾いてしまいます。
地盤沈下の原因は大きく7つに分類できます。
目次
震災としての地盤沈下
大地震によって地殻変動が発生し、広域で平均的に地盤が沈下することがあります。
このような場合は個々の建物の被害は軽微で、住人が気づかない場合もあるようです。
海抜が低い地区で広域に地盤沈下が発生した場合、満潮時に床下浸水被害を受けて初めて気付くケースもあります。
また、大地震により地下の空洞が崩れ、地表が土の重みに耐えられなくなった場合には、部分的に陥没する被害も発生します。
「周りの家は被害がないのに、ご自分の家だけ傾いてしまった」という場合は、たいていは地盤の部分的な陥没によるものです。
液状化による地盤沈下
液状化現象により地盤内の水分が流出すると、その体積分だけ地表が下がり地盤沈下が起こります。
同じ敷地内であったとしても土の中の水分量が一定ということはありませんので、最終的には波打った表層になります。
このことにより地盤そのものが変形し、場所によって沈下度合いが違う地盤沈下を引き起こし、建物を傾けてしまいます。
経年圧密による地盤沈下
大きな地震を原因とした液状化による地盤沈下だけではなく、水分量の多い地盤の上に建物を建てた場合にも経年圧密による地盤沈下が発生する可能性はあります。
例えば、漬物をつけるときに上に漬物石を乗せます。
時間が経つと水分が抜けていき、漬物石が下に下がります。
その沈んだ分が地盤沈下と考えればわかりやすいと思います。
もし基礎下の地盤の水分量が偏っていた場合にはアンバランスに地盤が引き締まり、家が傾いてしまいます。
よくあるご相談としては、
- 家が川に面していて、じわじわとその方向に傾いてきた
- もともと軟弱な地盤で、建物の重みで傾いてきた
- 浴室、キッチンなどの水周りに向かって家が傾いている
- 盛り土の上の部屋だけ傾いてきた
- 擁壁がある方向に家が傾いている
などがあり、いずれも経年圧密による地盤沈下を原因としたものです。
近隣の工事による地盤沈下
新築マンション工事などで土を大きく掘った場合、近隣の地盤強度が弱くなる場合があります。
何も対策をしないで深い穴を掘ると、まわりの土圧が下がるのは当然のことです。
土圧が下がることによる近隣の地盤沈下、地盤陥没を防ぐために、シートパイル等の土留めを敷地の周りに深く打ち込み、地中に壁を作ってから土を掘削していくのが通常です。
特にビル工事で地下フロアや地下駐車場を作る工事の場合、深さ8メートル以上シートパイルを打ち込む場合もあります。
ただし水分量が多い地盤の場合、シートパイルの接合部の隙間から水と一緒に土が流れ出して、シートパイル外側の地盤沈下を引き起こし、最悪の場合は近隣の家を傾けてしまいます。
もともとは地盤の強度に問題がない地域にもかかわらず、地盤沈下の被害を受けてしまったという悩みはこのケースが多いようです。
公共事業等での土木工事によって地盤沈下を招き、近隣の建物を傾けてしまったことが何度かニュースなどで話題になったことはご周知のとおりです。
地下水の過剰な汲み上げによる地盤沈下
流れている深さは場所によりまちまちですが、地面の中には必ず地下水が流れています。
地盤の中の水分量が多いと液状化や、地層の変形によって地盤沈下を引き起こしたりと弊害が多く発生します。
しかし、単純に地下水を汲み上げて水分量を減らせばいいかというと、そういうわけにはいきません。
地下水を汲み上げると、水が含まれていた空間が空気と入れ替わります。
地下水を過剰に汲み上げてしまうと、その分空気の入り込んでいる空間が広くなり、上部の土の重みに耐えきれなくなった時にはその空間が陥没し、表層の地盤沈下を引き起こしてしまいます。
家庭で使う井戸程度の規模であればまったく問題がないレベルですが、工業用水として汲み上げ続けた場合は、近隣の影響を考える必要があります。
行政の地下水の汲み上げによる地盤沈下の対策としては「工業用水法」、「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」があります。
「工業用水法」とは17地域(10都府県63市区町村)にあり、工業目的の地下水利用者を制限するものです。
これらの地域は地下水の採取によって地盤沈下が発生しやすい地域なため、都道府県知事の許可を受けなければ、地下水を工業用水として使用することができません。
「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」とは特定の地域内にて、トイレや冷房などの設備用として地下水を採取する場合に、地盤沈下の防止対策として規制をする法律です。
この2つの法律にあてはまることは、地下水を過剰に採取して地下に大きな空洞をあけてはいけない、環境を大きく変えてはいけないということです。
自動車や鉄道の交通振動を原因とした、土の締め固めによる地盤沈下
大きな道路に面していたり、線路の近くの土地では、長年の振動によって地盤沈下が発生する場合があります。
交通振動のみで地盤沈下するケースは少なく、たいていは地下水位が高いなどの複合的な理由によります。
地下のトンネル工事による地盤沈下
地下トンネルの崩壊による道路の地盤沈下が過去にニュースになりました。
「大深度地下使用法」という法律の制限は受けますが、土地の所有権は地下にも及ぶため、地表から40メートル下までは勝手にトンネルを掘られることはありません。
住宅が地下トンネル工事によって地盤沈下する可能性は、道路と違いほとんどありませんから、これについて対策したり、心配したりする必要はまったくありません。
まとめ
地盤沈下には上記のようなさまざまな原因が考えられます。
被害が大きい場合は、1つだけではなく複合的な原因であることが多いようです。
以上のことを知識として覚えておくと、きっと今後の減災について考える時に役立つでしょう。
このページの用語解説
圧密(あつみつ)とは
上部からの圧力により土の体積が減少することを圧密と言う。土の上に家などの重みがかかると、土内部の水と空気が搾り出されて引き締まった土ができる。引き締まった分、表層が沈下する。
液状化現象(えきじょうかげんしょう)とは
砂と水が多い地盤が揺れると発生する。水と砂が分離して、水が噴き出してしまう現象。地盤沈下を引き起こす。
掘削(くっさく)とは
土をシャベルや重機を使って掘ったり、穴をあけたりすること。
シートパイル(しーとぱいる)とは
土を掘ったときに崩れてこないように、土を支えるために縦に設置する鉄製の板のこと。矢板の一種。
地盤沈下(じばんちんか)とは
土の中の隙間が埋まって表層の土地が陥没すること。地震による液状化でも発生する。
土留め(どどめ・つちどめ)とは
もともとの斜面に土を盛った場合、または土を掘ったときに出来る壁面などが崩れないように、木や鉄の板を縦に設置する工程のこと。山留め(やまどめ)と同じ意味。頑丈な鉄筋コンクリート製のものは擁壁(ようへき)と呼ぶ。
盛り土(もりつち・もりど)とは
斜面の土地で、低い部分に土を入れて平坦な地面を作ること。比較的軟弱な地盤になる。
矢板(やいた)とは
土を掘ったときに崩れてこないように、土を支えるために縦に設置する板のこと。木や鉄が使われる事が多い。
擁壁(ようへき)とは
斜面や段差がある土地で、崩れてこないように土を留めて(とどめて)おく為に作られた、鉄筋コンクリート造の壁のこと。土留め(どどめ)の一種。
よくあるご質問
- 地盤沈下で家が傾きました。原因を解消して家を安定させる方法を教えてください。
- アンダーピニング工法や薬液注入工法を用いて、家の傾きを直して地盤を安定させることをおすすめします。家屋重量による圧密沈下だけでなく、液状化にも効果的です。
- お庭が地盤沈下しています。原因は何が考えられますか?
- 軟弱地盤もしくは水はけが悪い土地の場合、土の自重で圧密沈下したのかもしれません。交通振動を原因とした土の締め固めや、近隣の工事による影響も考えられます。