家の傾きの瑕疵担保責任はどこから?契約書や判断基準の解説

「家は一生に一回の買い物」と言われるように、それだけで人生における大きなイベントのひとつです。
決意して購入した家に、ある日傾きがみられたら、どうすればいいのでしょうか?
泣き寝入りするしかない?そんなことはありません。
家を購入した後に家の傾きをはじめとした欠陥を発見した場合は「契約不適合責任(瑕疵(かし)担保責任)」として、家を売った人に対してさまざまな請求が可能なんです。
今回は、どのくらいの傾きから請求が可能なのか、どのように保証されているのかを詳しく解説していきます。
目次
購入した家は新築?中古?
まず、購入した家は新築なのか、それとも中古なのか。これは大きなポイントです。
もし新築の住宅であれば「住宅の品質確保の促進等に関する法律」において、完成後の引き渡しから10年の間は家の傾きに対する保証がなされているからです。
後述します「家の傾きにおける不適合」の基準に該当する場合は、その補修を売主の負担で行ってもらえる可能性が高いといえるでしょう。
「じゃあ、中古の住宅だとそういった保証はないから泣き寝入りしかないの?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
中古の住宅であっても民法で定められた「契約不適合責任」に該当すれば、補修や損害賠償を請求できます。
住宅における「契約不適合責任」とは?
買主は家の傾きやシロアリ被害など、購入する前は知らなかった欠陥に気づいた場合、家の売主に対して補修や損害賠償を請求できる権利があります。
これが「契約不適合責任」です。
契約不適合とは「引き渡しされた品物(この場合は住宅)が、品質または数量に関して契約の内容に適合しない」ことを指します。
以前は「瑕疵担保責任」という名称でしたが、民法が2020年4月に改正され、名称は「契約不適合責任」に変わりました。
「瑕疵」は「隠れた欠陥」という意味なので、ぱっと見ただけではわからない「家の傾き」や「基礎の不具合」などが対象でした。
しかし「不適合」という単語になったことで、その欠陥が隠れたものかそうでないかにかかわらず、目的の品質であるかどうかが基準になり、内容はより買主に寄り添ったものになったと言えます。
家の傾きの場合、どのくらいからが「不適合」とされる?
不適合(瑕疵)として認められるもののひとつが「家の傾き」です。
しかし、ほんのわずかな傾きも「不適合」としてしまうと、ほとんどの住宅が不適合になってしまうため、一定の基準が設けられています。
具体的には、新築の住宅の場合「3/1,000以内」、中古住宅の場合「6/1,000以内」は傾いていても許容範囲とされ、家の傾きという不具合(不適合)ではないとされます。
この1,000とはミリメートル、つまり1メートルのことで、1メートルにつき3ミリまたは6ミリ以内の傾きであればOK、ということです。
逆に言えば、それよりも大きな傾きがある場合、「契約不適合(瑕疵)」というかたちで補修や損害賠償を請求できる可能性が出てきます。
家の傾きを調べる際はきちんとした業者に依頼するのがおすすめ
仮に「家が傾いているかも」と思ったら、きちんとした調査業者に依頼することをおすすめします。
今はスマートフォンアプリを利用することで依頼をしなくてもある程度の計測は可能ですが、やはりプロの計測技術とは雲泥の差があります。
加えて調査を第三者に行ってもらうことで、その結果にも説得力がでるので請求もしやすくなります。
「契約不適合責任」が認められた場合、買主側ができることは?
家の傾きが認められた場合、売主に対して以下の4つの請求ができます。
- 追完請求
- 代金減額請求
- 損害賠償
- 解除
「追完請求」とは、簡単に言えば補修のことです。
家の傾きであれば、それを補修して直してもらうことを指します。
注文者(買主)が大きな不利を背負うことがなければ、注文者が指定した方法でなくとも構いません。
「代金減額請求」とは、その不備(今回の場合は家の傾き)を理由に、購入金額を安くしてもらう請求のことです。
ただしこれを行うには、買主が売主に対して相当の期間を定めて補修をお願いしたものの、全くそれがなされない場合や、売主側が補修を明確に拒絶した場合といった一定の要件があります。
「損害賠償」は、不適合によりなんらかの損害を受けた場合の賠償を請求できる権利です。
「解除」は追完が行われない場合や補修を拒絶された場合に行える、契約の解除のことです。解除した場合、家は返品します。
「契約不適合責任」の存続期間は?
民法改正前である「瑕疵担保責任」では、「買主が瑕疵の事実を知った時から1年以内に損害賠償や契約の解除(権利行使)を行わなければならない」とされていました。
しかし、改正されて「契約不適合責任」となった現在では、「買主が不適合の事実を知ってから1年以内に売主に対して通知」をするだけでよくなり、買主側にとって非常に有利になったと言えます。
契約によっては期間が短くなっていることもあるので注意!
ここまで「契約不適合責任」について説明してきましたが、非常に重要なポイントがあります。
それは、買主と売主の間で合意があれば「契約不適合責任」を免除することも可能、ということです。
免除だけでなく、契約不適合責任の通知が可能な期間を「1年ではなく3カ月にする」というように短くも、逆に「1年ではなく2年にする」というように長くもできます。
また、「知った時から1年」ではなく「家の引き渡しから1年」のように、「起算点(どこから契約不適合責任の有効期間にするか)」の変更も任意で行えます。
期間の短縮・延長・免除まで買主と売主の間でいろいろと変更がきく部分なので、買主側としてはしっかりと契約書をチェックしなければなりません。
特に中古の住宅を購入する場合、この期間が短くなっていないか、あるいは免除になっていないかといった、「契約不適合責任」が適用される期間については、契約書に必ず記載されている部分なので厳重なチェックが必要です。
中古住宅を購入した後に家の傾きに気づいた場合の具体的な対処法はこちらの記事にて詳しく解説しています。
免除が無効になる条件もあるので、あわせて知っておこう
とはいえ、契約書上では免除としていても、以下の要件に該当すると無効になりますので、有事の際はこちらに該当していないかもあわせてチェックしたいですね。
- 売主が契約不適合を知っていながらそれを買主に告げなかった場合(民法572条)
- 宅地建物取引業者が売主の場合(宅地建物取引業法40条)
- 事業者と個人の取引の場合(消費者契約法8条)
- 新築住宅(住宅の品質確保の促進等に関する法律95条)
家の傾きも程度によって補修や賠償を請求できる!契約書は要チェック
新築住宅であっても、中古住宅であっても、一定以上の家の傾きがあるならば、売主に対して「契約不適合責任」として補修や損害賠償の請求が可能です。
購入して時間がそんなにたっていないのであれば、請求できる可能性は非常に高いといえるでしょう。
しかし中古住宅の場合、契約内容によっては「契約不適合責任」を通知できる期間が短くなっていたり、あるいは免除されている可能性もあります。
契約前にもしっかりと契約書をチェックし、いつまで請求が可能かをしっかりと把握しておくことが重要です。