傾いている中古住宅を購入してしまった場合の対処法(契約後の対応策)
目次
軟弱地盤地域の中古住宅を購入する際は要注意
中古住宅の不同沈下(家の傾き)が契約後に発覚し、トラブルになるケースがあります。
かなり家が傾いていたとしても、売り主や仲介不動産会社が「気づかなかった」ならば告知義務はありません。
売買取引完了後に売り主側に家の傾き修正工事を要求しても断られるでしょう。
そもそも不動産取引の重要事項説明範囲に地盤のことが含まれていないのです。
購入前に確認しておくことが大切です。
傾いている中古住宅を購入してしまった場合の対処法(契約後の対応策)とは?
中古の一戸建てを購入し、実際に住んでみてから家の傾きに気づき、対応にお悩みの方もいらっしゃると思います。
他にも「部分的に傾いてるだけで生活に支障はない」と言われ購入したが、実は家全体が傾いていて、とても住んでいられないという方からのご相談もいただきました。
契約前であればなんとでもなりますが、契約後や、特に決済が終わっている状態で瑕疵(かし=欠陥のこと)を見つけた場合は少しやっかいですので、慎重に対応していきましょう。
まずは、
売り主(所有者)が不動産会社か、一般人かの再確認
宅地建物取引業者(不動産会社)が売り主なのか、仲介だけなのかどうかで「住宅瑕疵担保履行法(じゅうたくかしたんぽりこうほう)」による適用範囲が変わってきます。
住宅瑕疵担保履行法は個人の保護を優先しているため、売り主(所有者)が業者であれば責任を追及できる可能性が高まります。
業者が特約で瑕疵担保免責(欠陥の責任を負わないこと)を付けたとしても、無効と判断されるケースもあるのです。
契約書の瑕疵担保責任期間の確認
宅地建物取引業者が売り主の場合は、責任期間を2年以上に設定しなければいけません。
しかし売り主が個人の場合は、契約書上で2~3ヶ月程度に限定することも認められています。
1ヶ月未満など短かすぎる場合は、買い主に極端に不利な契約とみなされ、無効とされる可能性があります。
保証書の有無、約款の内容の確認
中古住宅の売買の場合、保証書がない場合も多いようです。
約款の内容も熟読し再確認しましょう。
たとえば、約款に瑕疵担保免責(現状有姿の引き渡しで、売り主は欠陥の責任を負わないこと)の記載があったとします。
この場合でも、別項に「地盤の瑕疵を除く」と記載されていれば、買い主は家の傾きの修正を要求できる可能性が高いのです。
家の傾きの範囲と程度(許容範囲内かどうか)の確認
取引をした、もしくは仲介した不動産会社に家の傾きの測量を依頼しましょう。
基準点より1,000ミリ(1メートル)離れた所で6ミリを超えている場合は、明らかな瑕疵(許容範囲外)として修繕を要求できます。
関係者ではない第三者の業者に測量を依頼するのも一案です。
【参考記事】 家の傾きの許容範囲は何度?調べ方から修理費用まで総まとめ
売り主(または買い主)が「既存住宅売買瑕疵保険」に加入しているかどうか
取引後に物件に欠陥が見つかった場合に、修復費用として保険金が支払われる保険です。
個人タイプと業者タイプがあります。
瑕疵担保免責で中古住宅を購入する際は、買い主のリスク回避として既存住宅売買瑕疵保険への加入が必須と言えるでしょう。
残念ながらあまり周知されていないため、買い主側で加入している人はごくまれなようです。
上記5項目を確認した後、売り主側に傾きの修理を依頼しましょう。
なお瑕疵に気付いていながら長期間放置していると、契約上ではなく法律上で時効になってしまう場合があるので要注意です。
早期解決が見込める状況とは
- 売り主(所有権者)が不動産会社もしくは建築業者である
- 家の傾きが明らかに1,000分の6以上である
売り主への交渉は必要となりますが、上記2点をともに満たしている場合は早期解決が期待できます。
金銭による損害賠償ではなく、売り主の全額負担で家の傾き修正工事を行うという解決結果がもっとも多いようです。
問題が長期化する可能性がある状況とは
売り主が個人もしくは傾きが1,000分の6未満の場合は、お互いの譲歩が必要となってくるでしょう。
相手方が抵抗の姿勢を示している場合、一方的に要望を通すのは困難です。
話し合いで解決することがベストですが、条件がなかなか折り合わない場合もあります。
話がこじれると長い時間がかかり、それなりの負担になってしまいます。
話し合いで、家の傾き修正工事の費用の一部を、売り主にも負担してもらうぐらいの要求に留めるのが現実的かもしれません。
【参考記事】 家の傾きの瑕疵担保責任はどこから?不適合責任と保証について解説
このページの用語解説
軟弱地盤(なんじゃくじばん)とは
建物を建てると今後悪影響がでると推定される強度の地盤のこと。明確な基準はない。
不同沈下・不等沈下(ふどうちんか・ふとうちんか)とは
地盤沈下の影響で建物が傾いた状態のこと。地盤沈下がおきても、建物がストンと傾かずに沈下した場合は不同沈下とは言わない。