家の傾きは慣れる?気にしなくてもいいの?
最初は違和感を覚えたとしても、ずっとそこに住んでいればいつの間にか慣れてしまうことは決して珍しい話ではありません。
例えば家の窓のひとつだけが開きづらいであるとか、引き戸を閉めるにはコツがいるといったことであれば、慣れてしまえばどうとういうことはなさそうです。
しかし、「家の傾き」となるとどうなのでしょうか。
傾きはまた別の話と考える方も多いでしょう。
そこで今回は、「家の傾き」に慣れることはあるのか、慣れてしまえば別に放置しても大丈夫なのか?といったことを調べてみました。
目次
傾きが全くない家はない!法律でも決められた許容範囲がある
そもそも、傾きが全くない家はありません。
その理由は、いくら工事をきちんと行ったとしても、湿気を吸うことで柱や梁(はり)の太さが少しだけ変わることで、わずかな傾きができてしまうようなことがあるからです。
ですので、法律では
- 新築の家の場合、「3/1,000(0.17度)以内」
- 中古の家の場合、「6/1,000(0.34度)以内」
であれば「傾きがあったとしても、それは許容範囲内である」と定めています。
それでは、許容範囲を超えた傾きがある場合、どのような現象や健康への影響が起こるのでしょうか。
特に体調の不良は個人によって大きく変わり、敏感な方はより小さい角度でも体調が悪くなるでしょうし、鈍感な方は「言われるほどではない」と感じることもあるでしょうが、学術研究によって導き出された、おおまかな目安があります。
- 5/1000(0.29度)…傾斜を感じる
- 8/1000(0.46度)…はっきりと傾斜を感じる。アパートなど集合住宅の場合、大家に苦情がくることも
- 10/1000(0.6度)程度…めまいや頭痛が生じる
中古の住宅の場合、「家が傾いているような気がする」と感じても、6/1,000以内であれば許容範囲とされています。
ですから、敏感な方は傾きを感じるかもしれませんが、そうでない方は特に気にならないことも十分に考えられますね。
逆に大きな傾きがある場合も基準が決められていますので、興味がある方はこちらの記事をご覧ください。
家の傾きに慣れるケースは実際にある
「家が傾いている」という認識があっても、その状態に慣れるケースは少なくありません。
といいますのも、家が傾いているからといって簡単に引っ越せる方ばかりではなく、仕方なくその家に住み続けなければならないことも多いからです。
長く住んでいるとそこに体が順応してくるのか、最初は体の不調を感じたものの、だんだん慣れてきてそういった症状を感じなくなった方もいますし、最初から全く健康に影響を感じなかったという方もいます。
もちろん、家の傾きが少しだけであっても「フラフラする」「めまいが収まらない」などの強い不調が出る方もいます。
- 家が傾いていることに慣れるか
- 家が傾いていることで不調が出ないか
という2点については個人差がありますが、経済的な問題や日々の忙しさなどを理由にそのまま住み続けるという選択を選ぶ方は少なくないでしょう。
しかし傾きに慣れてしまえばそれで問題がない、というわけではありません。
「明らかに家が傾いている」と気づきながらも放置していると、さまざまなデメリットがあるのです。
地震の大きさによっては壁にヒビが入る、床が抜ける可能性が!
家が傾いているということは、家が建っている土地に不同沈下(地盤の一部が沈んでいる状態のこと)が起きているか、あるいは家の基礎部分(太い柱や梁など)が大きくゆがんでいる、不安定になっているといったことが考えられます。
つまり、家の耐久度が下がっている可能性があります。
仮に大きな地震が来た場合に今よりも大きく家が傾いてしまったり、最悪の場合は家の一部(または全部)がつぶれてしまったりするかもしれません。
また、家がつぶれるようなことはなくとも、二階の床が抜けてしまう、壁に大きなヒビが入ってしまう可能性も考えられ、傾きの角度でも変わってきます「安全な家」ではないと言えるでしょう。
自分は平気でも来客が不調をきたす恐れが…
友達など他の人が家に遊びにきた際、家の傾きによってめまいや頭痛といった症状を感じる可能性があります。
自分は慣れていて大丈夫であっても、普段からその傾きに慣れていない人ですと平衡感覚がおかしくなってしまい、それに伴って気分が悪くなる、うまく歩けないなどの症状が出ることも。
せっかく友達を家に招待しても、家のせいで気分を悪くさせてしまうのはちょっとつらい話ですよね。
売却時に査定が低くなる可能性も!
家が傾いていると、資産価値にも大きくデメリットが生じます。
といいますのも、住んでいる家を売却しよう、あるいは人に貸そうと考えた時、傾きがない、あるいは少ない家に比べると査定額が低くなる可能性が高いからです。
また、明確に傾きがある家ですと、買い手側も「家が傾いているので遠慮したい」と言うことも多く、査定額が下がるだけでなく売れづらいというダブルのデメリットがあると言ってもいいでしょう。
「家に傾きがあることを内緒にして売ってしまえばいい」と考えるかもしれませんが、それは法律(民法)によって損害賠償請求を受ける場合がありますので、絶対にしてはいけません。
家の傾きが気になったら、自分で調査してみよう
「家が傾いていることには慣れたけど、今後地震が起きたら家がもっと傾いてしまうかもしれない」と不安になったかもしれません。
家の傾きは体調に不調をきたすだけでなく、安全性という面でも不安が残るものです。
正確な家の傾きを調べるには、きちんとした調査業者に頼むのがベストです。
しかし「とりあえず家には傾きがあるのか、それがどのくらいのものなのか知りたい」という場合は、自宅で簡単にできる測定方法もありますので、そちらでまず測ってみることをおすすめします。
今なら、スマートフォンアプリでも家の傾きを計測できますので、使ってみてもいいでしょう。
家の傾きの原因を調べて的確な対応を!
一定以上の傾きがあるのなら、一度プロに依頼して家の傾きがどのくらいのものなのかを調査し、加えて傾きの原因を調べてもらい、適切な対策を取ることをおすすめします。
何が原因で家が傾いているのかを知ることで、適切な対策が取れるという大きなメリットがあります。
地盤が柔らかいため、家の重みでじわじわと一部が沈んでしまった「不同沈下」であれば、原因は家ではなく「地盤」なので、工事をして地盤を強固なものにすることで家の傾きが改善されます。
地盤には問題がなくても、家の基礎(骨組み)部分が原因で家が傾いている場合、基礎の補強工事を行うことで家の傾きが解消できます。
長く暮らしていれば、家の傾きに慣れてしまうこともあり、体調面で不調がなければ特別問題はない、と考える方もいるでしょう。
しかし、家が傾いているということは、それだけ地震で家が倒壊する、あるいは一部がつぶれてしまうといったリスクを抱えていることに他なりません。