沈下修正とは?住宅の沈下原因と修正工法について徹底解説!
「沈下修正」とは、地盤沈下が原因で傾いた建物を、元の水平状態に戻すために行う作業のことです。
地震や水害などの自然災害が原因で地盤が沈下すると、その上に建つ建物も不均一に沈下してしまうことがあります。
傾いた建物は、建物全体のバランスが崩れ、安全性に問題が生じます。
沈下修正は、建物の傾きを解消し、安全性を確保することを目的として行われます。
沈下修正には、その沈下した原因に応じた適切な対策が必要であり、建物の構造や用途、周辺環境などにも十分に配慮しなければなりません。
また、専門的な技術が必要とされるため、施工業者の選び方や工事内容については信頼できる専門家に相談することが大切です。
しかし、沈下修正について詳しく知らない人が多いのも事実です。
正しい知識を身につけることで、沈下修正業者選定の精度は間違いなく向上します。
適切な業者を選び、家族の悩みをスッキリと解消し、安心で快適な生活を取り戻しましょう。
この記事では、沈下修正の工法や費用、沈下の原因などについて詳しく解説していきます。
目次
住宅が不均一に沈下する「不同沈下」とは?
不同沈下(ふどうちんか)とは、地盤が沈下する際に、建物の一部分が他の部分よりも大きく沈下することを指します。
不均一に沈下するため、結果として建物の傾きが発生します。
地盤沈下は、地震、地下水の過剰なくみ上げ、隣地の掘削、盛土の圧密などが原因として挙げられます。
【参考記事】 知らないと怖い地盤沈下の主な7つの原因
不同沈下が起こる原因の一つは、地盤の質による影響です。
たとえば、河岸段丘地形(かがんだんきゅうちけい=川の周囲に発生する階段状の地形)では、河岸から遠くなるにつれて堆積物の量が少なくなり、河岸からの距離によって地盤の硬さが異なります。
この場合は河岸に近い範囲が軟弱で、遠くなるにつれて硬くなる傾向があります。
地盤の強度が一定ではない場合、硬い部分と柔らかい部分が混在するため沈下の程度に差が生じ、柔らかい部分に向かって建物が傾いてしまいます。
不同沈下は、建物の一部が傾いて構造に歪みが発生している状態です。
それゆえに、建物の耐震性や安全性を損ないます。
不同沈下を放置すると被害は悪化し、建物自体が危険な状態に陥るため、早期の対処が必要です。
不同沈下に対する解決策として、沈下した建物を元の水平状態に戻す「沈下修正」が行われるのです。
沈下修正の工法とそれぞれの特徴
建物の不同沈下に対する解決策として、さまざまな沈下修正工法が存在します。
以下に、代表的な4つの工法を紹介します。
- アンダーピニング工法(鋼管杭、コンクリート杭)
- 耐圧板工法(耐圧盤工法)
- 土台上げ工法
- 薬液注入工法
アンダーピニング工法(鋼管杭、コンクリート杭)
鋼管杭を使用:工期は3~4週間前後が目安で、最多価格帯は400万円~600万円です。
コンクリート杭を使用:工期は3~4週間前後が目安で、最多価格帯は250万円~350万円です。
【参考記事】 アンダーピニング工法で家の傾きを修理!費用・メリット・デメリットを解説
アンダーピニング工法のメリット
- 再沈下の危険性がない
- 今後も沈下が予測される軟弱な地盤でも適用可能
- 支持層が深くても施工可能
- 建造物が重くても施工可能
- 地盤の状況を問わず保証がつく
- 精度の高いレベル修正(微調整が可能)
- 住んだ状態のまま工事可能で、仮住まいは不要
- 住宅密集地でも工事可能
- 布基礎、ベタ基礎、杭基礎、無筋の基礎など種類を問わず工事可能
- 大型トラックは不要で近隣住民に迷惑がかからない
アンダーピニング工法のデメリット
- 工事費用が比較的高額
- 施工業者が少ない
- 工期が長い
- 残土処理が発生する
- 地中障害物がある場合は注意が必要
アンダーピニング工法(鋼管杭、コンクリート杭)の工事手順
再沈下の心配がほぼなく、軟弱地盤にも効果的な家の傾き修正工法です。
重量のあるコンクリート造建築物の場合にはもっとも適した工法と言えるでしょう。
基礎の下を手作業で掘り、50cm(センチメートル)以下に切断した鋼管杭を縦に設置します。
基礎と杭の間にジャッキを設置し、家の重みを利用して杭を地中にめりこませていきます。
杭を溶接して継ぎ足しを繰り返し支持層まで到達させて、さらにジャッキを伸ばすと家が上がるという原理です。
人力での作業が多いためスペースが狭くても問題ありません。
お庭や駐車場などに一箇所入り口を作り、基礎の下にトンネルを掘って作業を行います。
アンダーピニング工法(鋼管杭)の工期は3~4週間前後が目安で、最多価格帯は400万円~600万円です。
木造住宅の沈下修正においては、鋼管杭ではなくコンクリート杭を使用する方が経済的です。
アンダーピニング工法(コンクリート杭)の工期は3~4週間前後が目安で、最多価格帯は250万円~350万円です。
耐圧板工法(耐圧盤工法)
耐圧板工法の工期は2~3週間前後が目安で、最多価格帯は200万円~400万円です。
【参考記事】 耐圧板工法で家の傾きを基礎から直す!費用や特徴・注意点を徹底解説
耐圧板工法(耐圧盤工法)のメリット
- 工事費用が比較的安い
- アンダーピニング工法より工期が短い
- 施工業者が多い
- 精度の高いレベル修正(微調整が可能)
- 住んだ状態のまま工事可能で、仮住まいは不要
- 住宅密集地でも工事可能
- 布基礎、ベタ基礎、杭基礎、無筋の基礎など種類を問わず工事可能
- 振動や騒音、環境汚染が少ない
- 大型トラックは不要で近隣住民に迷惑がかからない
耐圧板工法(耐圧盤工法)のデメリット
- 地盤の沈下が終息していない場合は再沈下の危険性がある
- 今後も沈下が予測される軟弱な地盤では適用不可能
- 支持層が2m以上深い場合は施工不可
- 建造物が重い場合は支持層の見極めが欠かせない
- 工事保証は地盤の状況次第
- 残土処理が発生する
耐圧板工法(耐圧盤工法)の工事手順
地盤沈下で家が傾いてしまったとしても、今後これ以上地盤そのものの沈下は起こらないと思われる場合に採用される工法です。
軟弱地盤上で、沈下が終息していない場合には一時しのぎにしかなりませんので注意が必要です。
地盤の沈下は落ちついていて固くなっているか、もしくは地盤改良後なら再沈下の心配はありません。
基礎下の土を掘り、耐圧板(50㎝×50㎝前後の鉄板)を設置して、基礎をジャッキアップしていきます。
家の水平がとれたら、高さが固定できる台座を耐圧板と基礎の間に据え付けて、ジャッキを取り外し埋め戻します。
耐圧板工法の工期は2~3週間前後が目安で、最多価格帯は200万円~400万円です。
土台上げ工法
土台上げ工法の工期は2~3週間前後が目安で、最多価格帯は200万円~400万円です。
【参考記事】 家の傾きは自分で直せる?DIYの手順や注意点を徹底解説!
土台上げ工法のメリット
- 工事費用が比較的安い
- アンダーピニング工法や耐圧板工法より工期が短い
- 施工業者が多い
- 精度の高いレベル修正(微調整が可能)
- 家屋内部から行う作業が多く、住宅密集地でも工事可能
- 布基礎、ベタ基礎、杭基礎、無筋の基礎など種類を問わず工事可能
- 振動や騒音、環境汚染が少ない
- 大型トラックは不要で近隣住民に迷惑がかからない
- 掘削作業が不要で残土処理が発生しない
土台上げ工法のデメリット
- 基礎と土台を切り離す際に床の撤去が必要な場合がある
- 床を剥がす範囲では生活ができず、仮住まいが必要な場合がある
- 基礎の修復が必要
- 基礎は傾いたままであり、建物の構造に悪影響を及ぼすことがある
- 地盤の沈下が終息していない場合は再沈下の危険性がある
- 今後も沈下が予測される軟弱な地盤では適用不可能
- 建造物が重い場合は不適
- 地盤からの再沈下は工事保証の対象外
土台上げ工法の工事手順
耐圧板工法と同じく、これ以上地盤の沈下は進行しない場合で、土台の強度がある場合に有効な工法です。
地盤沈下が終息していない場合(地盤が軟弱のまま等)は、再沈下が発生する事を念頭に入れておく必要があります。
基礎とその上に横置きしている角材(土台)を切り離し、基礎は傾いたままの状態で土台・柱・壁をジャッキアップしていきます。
土台が水平になったら、基礎との間にできる三角形の隙間に鉄板や木材などを差し込み、モルタルで仕上げます。
土台上げ工法の工期は2~3週間前後が目安で、最多価格帯は200万円~400万円です。
薬液注入工法
薬液注入工法の工期は1~2週間前後が目安で、最多価格帯は250万円~400万円です。
【参考記事】 薬液注入で家の傾きを直す工法(グランドコンパクション工法)
薬液注入工法のメリット
- 工事費用が比較的安い
- 耐圧板工法や土台上げ工法より工期が短い
- 掘削作業が不要で残土処理が発生しない
- 住んだ状態のまま工事可能で、仮住まいは不要
- 埋め立て地、盛り土、砂層、粘土層、レキ層などあらゆる地盤に対応
- 地盤改良を伴うため、再沈下の危険性は低い
- 地盤改良を伴うため、工事の保証が付く
薬液注入工法のデメリット
- 住宅密集地では作業効率が落ちるため、コストが上がる
- 掘削時やポンプ稼働時に多少の騒音が出る
- 他の工法に比べ精度は劣る(微調整が不可能)
- ほとんどの施工業者はベタ基礎が条件で、布基礎、杭基礎、無筋の基礎では工事不可
- 大型トラックが必要で近隣への配慮が必須
薬液注入工法の工事手順
軟弱地盤上でベタ基礎の場合に採用されやすい工法です。
セメントを混ぜた液体を基礎の下の地盤内に注入し、その注入圧によって地盤ごと家を持ち上げて傾きを直します。
家の傾き修正と同時に地盤改良を兼ねるので、再沈下の可能性は低いと言えます。
布基礎の場合は、耐圧板工法と併用すると施工精度が上がります。
技術の進歩により、工法が開発された当初に発生していた「家と一緒にブロック塀も持ち上がってしまう現象」は大幅に少なくなりました。
建物のまわりのスペースが狭い場合は、作業効率が落ちる(工事金額が高くなる)ため、他の工法を選択したほうが無難と言えるでしょう。
逆にスペースが広ければ広いほど効率よく工事ができるため、条件が合えば採用するべき工法です。
薬液注入工法の工期は1~2週間前後が目安で、最多価格帯は250万円~400万円です。
沈下修正についてのまとめ
沈下修正という言葉の意味、沈下の原因は何か、そして沈下修正の工法や費用についてこの記事で解説しました。
沈下修正にはさまざまな工法があり、それぞれに長所と短所があります。
一つの情報源だけでなく、複数の専門家の意見を聞いて、自宅に最適な沈下修正工法を選ぶことが重要です。
この記事が、家の沈下に悩んでいる方や沈下修正を検討している方にとって有益な情報となれば幸いです。
レフトハウジングの1,000棟を超える沈下修正の実績と経験
レフトハウジングは1,000棟を超える沈下修正の実績と経験を持っており、確かな技術と知識を備えています。
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よくあるご質問
- 沈下修正とは? 言葉の意味や定義を教えてください。
- 「沈下修正」とは、地盤沈下が原因で傾いた建物を、元の水平状態に戻すために行う作業のことです。建物の傾きを解消し、安全性を確保することを目的とします。
- 沈下修正の工法にはどのようなものがありますか?
- 建物の不同沈下には、さまざまな修正工法があります。その中でも代表的な4つの工法として、アンダーピニング工法、耐圧板工法、土台上げ工法、薬液注入工法が挙げられます。これらの工法の特徴、費用、メリット、デメリットについて、本文で解説しています。