地盤沈下しない良い盛土とは?家の傾きは軟弱な盛土が原因?
「斜面に盛土をして家を建てているけど、盛土が沈下して家が傾いたり倒壊したりしないか心配」という方もいらっしゃると思います。
盛土は比較的軟弱な地盤であることが多いため、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
新しく土を盛って造成された土地は、数年から数十年寝かせるか、もしくは沈下が起こらないように対策をしてから家を建てる必要があります。
適切な材料で盛土され、地盤改良工事や十分な締固めが行われていれば問題はありません。
しかしすでに盛土の上に家が建っている場合、良い盛土なのかどうかを調べることは困難です。
もしも、質の悪い盛土が原因で家が傾いた場合は直すことができるのでしょうか?
そして盛土の上に建っている家の傾きを予防することはできるのでしょうか?
この記事では盛土の質の違いや、盛土の上に建っている建物の地盤沈下対策について解説していきます。
目次
盛土ってどんなもの?
盛土とは、自然の地盤の上に土を盛って、平らな敷地を作り上げることを言います。
平らにする以外にも、平坦な土地に勾配をつけたり、地面の高さを変えたい場合に盛土が行われます。
盛土の材料や施工方法によって著しい優劣があり、質の良い盛土と質の悪い盛土に分かれるので注意が必要です。
盛土に使われる材料は、「公共工事標準仕様書」において以下の種類が規定されています。
- 山砂
- 再生コンクリート砂
- 根切り土の中の良質土
- 他の現場で発生した良質土
本来の盛土はこれらの材料で構成されています。
しかし質の悪い盛土には、ゴミ、木片、ガラスや岩などが混入していることもあるのです。
家が傾く原因となる盛土、4つの要素とは?
- 異物が混入している盛土
- 排水不良の擁壁に囲まれている盛土
- 山側を切土、谷側を盛土にしている土地
- 池や水田などを埋め立てた軟弱地盤上の盛土
異物が混入している盛土
異物が混入している盛土は中に空隙(くうげき=隙間)が出来ています。
長い期間をかけて隙間が埋まっていくと、その分だけ土の体積が減少し、地盤沈下してしまうのです。
排水不良の擁壁に囲まれている盛土
擁壁の排水処理がきちんと行われていない場合、盛土が沈下する可能性が高まります。
水抜き孔が適切に機能していないと水はけが悪くなり、少しずつ土の水分量が増加。
排水されない雨水と土が混ざって泥になってしまうと、地耐力が落ちて地盤沈下の原因となるわけです。
山側を切土、谷側を盛土にしている土地
切土と盛土にまたがって家を建てている場合、盛土側のみが沈下する傾向があります。
地盤の強度が異なると、家の重量により地盤が不均一に収縮し、結果として家が傾いてしまいます。
ひな壇造成地によく見られます。
家を建てる前に、異なる地盤強度を均一にする対策が必要です。
池や水田などを埋め立てた軟弱地盤上の盛土
農地を宅地に変更した場合にありがちな現象です。
田んぼを埋め立てた土地と道路との高低差を揃えるために盛土をする場合があります。
この場合、盛土の重量により埋め立て前の地盤が沈下してしまうのです。
質の良い盛土とは?
山砂や再生コンクリート砂など盛土に使われる材料の品質が良く、転圧や締固めがしっかり行われていて、丈夫で宅地に適している状態であれば良い盛土と言えるでしょう。
強度の確認(品質管理)がきちんと行われている必要もあります。
具体的には、
- 締固め度が90%以上
- スウェーデン式サウンディング試験で自沈しない
- 台風や梅雨などの大量の雨を経験している
- 盛土を行った地盤の沈下期間を終えている
といった地盤であれば問題ありません。
スウェーデン式サウンディング試験では、地盤に鉄の棒を垂直に刺して回転させ、その沈み具合で地盤の強度を調査します。
ロッドの沈下に時間がかかればかかるほど地盤が固まっていると判断できます。
盛土の材料の中では山砂や再生コンクリート砂が適していると言われています。
山砂や再生コンクリート砂で盛土をして、転圧し、ある程度の期間盛土を寝かせてから家を建てるのが理想的です。
盛土が不同沈下するとどうなる?
盛土や軟弱地盤の上に建物が建っている場合、地盤の状態が悪いと地盤とともに建物が傾いてしまうことがあります。
この現象を不同沈下と言います。
荷重が偏っている建物を建てた場合や、盛土と切土が合わさった地盤に建てた場合も不同沈下の可能性が高まります。
建物を建てる際には、荷重分配がなるべく均等になるように注意するべきでしょう。
なおかつ、地盤の状態に合わせた荷重分配がなされていればベストです。
盛土と切土が合わさっている場合も、切土はもともとの土地なので地盤が硬いことが多い反面、盛土は新たに土を盛ってつくられるので、どうしても盛土のほうが軟弱地盤になってしまいます。
このような場合も、沈下しやすい盛土のほうに地盤沈下対策を施す必要があります。
許容範囲内で均一に沈下(等沈下)するのであればまだ良いのですが、建物が傾いて沈下(不同沈下)するとさまざまな不具合が生じてしまいます。
片側に負担がかかることによって、外壁や基礎に亀裂が入る、排水異常により水はけが悪くなる、汚水が溢れる、雨漏りするなど、いろいろな問題が起きてきます。
沈下が大きくなると建物は半壊状態になり、場合によっては復旧工事に300万円以上もの費用がかかる場合もあるのです。
【参考記事】 傾いた家に住み続けるのは危険!家の傾き15のデメリットとは
新築時における盛土の沈下対策工事とは?
ハウスメーカーは盛土をしてすぐに家を建てることを前提にして造成工事を行っています。
そのため、重機で盛土を締固めた後にセメント系材料による地盤改良を行い、盛土の沈下対策をしたらすぐに建築作業に入ります。
木造住宅の場合、表層改良か柱状改良で盛土を強化するのが一般的です。
ただ、スウェーデン式サウンディング試験の結果が良好だった場合、地盤改良を行わずそのまま基礎工事に入ることも多いようです。
RC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)などの重量がある建物の場合は、鉄の杭を支持層まで打ち込む必要があります。
すでに盛土の上に建っている家の傾き対策はある?
- 盛土の上に建っているが地盤改良をしていない
- 盛土の地耐力を確認せずに家を建ててしまった
- 水はけの良くない造成をしている
- 造成計画図が残っていない
- 盛土側に荷重が偏ってしまうような建物を建ててしまった
- 家はまだ傾いていないが盛土が沈下して空洞がある
- 擁壁がずれている
これらの状況で、今後に不安を抱えている方もいるのではないでしょうか?
質の悪い盛土の上にある家は小さな地震でも悪影響を受けやすく、非常に不安定な状態だと言えるでしょう。
建っている家の下にある地盤の状態確認は難しく、コストもかかります。
基礎の下にある土を交換することも現実的ではありません。
盛土の品質が疑わしいのであれば、盛土前の地盤もしくはそのさらに下にある強固な地盤まで新たに杭を打ち込み、家を安定させることをおすすめします。
アンダーピニング工法を用いて、既存の基礎下にコンクリート杭(鋼管杭)を支持層まで圧入します。
工事後は強固な地盤で家を支え続けるため、家屋の重量による盛土収縮が防げますし、家が傾く心配もなくなります。
家の傾きを防止するアンダーピニング工法の詳細解説
アンダーピニング工法とは、建物の荷重と油圧ジャッキを利用して新規に杭を打ち込み、支持層に到達した杭を反力にして家の傾きを修正する工法のことです。
ビルやマンションなど大規模建造物の沈下修正工事にも用いられ、橋や駅などの公共事業でも採用されている非常に信頼性の高い工法です。
強固な地盤までコンクリート杭(鋼管杭)を打ち込む工法のため、工事後の建物の傾きを抑制する効果もあります。
アンダーピニング工法は、もちろん傾いていない建物に対しても施工可能で、今後の傾きを予防する効果を発揮します。
新築住宅の完成後に軟弱地盤が発覚したためアンダーピニング工法で新規杭を打ち込む、という例も珍しいことではありません。
【参考記事】 アンダーピニング工法で家の傾きを修理!費用・メリット・デメリットを解説
家の傾きを防止するアンダーピニング工法の費用感
アンダーピニング工法によって家の傾き「修正」工事を行う場合、300万円前後の工事代金が相場となっています。
これに対し、家の傾きを「事前に防ぐための工事」であれば、施工範囲を絞ることもできるうえ傾き修正作業も省けます。
建物の状況によって変化しますが、家の傾き予防工事の最多価格帯は50~100万円です。
傾いてから直す工事と比べてはるかに経済的と言えるでしょう。
盛土が原因で家が傾いてしまったらどうする?
盛土によって家が傾いてしまった場合、直すことは出きるのでしょうか?
沈下の進行状況や支持層の深さ、沈下の原因などのさまざまな状況によって最適な修正工法は異なりますが、傾きを直すことは可能です。
盛土を原因とする家の傾きは、薬液注入工法もしくはアンダーピニング工法を用いて修正します。
薬液注入工法とは、地中にセメント系薬液を注入し、その注入圧によって地盤を隆起させ、家の傾きを修正する工法のことです。
敷地が広くて作業スペースが大きく確保できる状況であれば、比較的短期間で工事完了できます。
田んぼに盛土をした土地や水辺が近い土地に適しています。
一方、薬液が水抜き穴を塞いでしまう、擁壁を横に押してしまうなどのトラブルが想定されるため、擁壁に囲まれている盛土の場合は、薬液注入工法ではなくアンダーピニング工法を採用すべきです。
アンダーピニング工法については前々項をご参照ください。
盛土に不安がある場合は早めの対策を!
家を建てる前であれば、しっかりと調査して地盤の特徴に合った方法で家を建てることで長く安心して住み続けることができます。
しかし建てた後では調査方法や対策方法が限定されてしまいます。
詳しい業者が近くにいないという理由で、地盤への不安を放置されてはいませんか?
実際に盛土が沈下し家が傾いていて、さらにそれが少しずつ進行しているかもしれません。
対処不可能になる前に、早めに専門家へ相談して地盤への不安を解消しましょう。
よくあるご質問
- 盛土の上にある家に住んでいますが、盛土が沈下して家が傾いたり倒壊したりしないでしょうか?
- 適切な材料で盛土され、地盤改良工事や十分な締固めが行われていれば心配ないでしょう。しかしすでに盛土の上に家が建っている場合、良い盛土なのかどうかを調べることは困難です。
- すでに盛土の上に建っている家の傾き対策はありますか?
- 盛土の品質が疑わしいのであれば、盛土前の地盤もしくはそのさらに下にある強固な地盤まで新たに杭を打ち込み、家を安定させることをおすすめします。傾いてから直す工事と比べてはるかに経済的です。