住宅が地盤沈下する原因、「圧密沈下」と「液状化」を知っておこう
住宅が地盤沈下する代表的な原因として、「圧密沈下」と「液状化」の2つがあげられます。
圧密沈下は、多くの場合、粘性土(ねんせいど=砂よりも細かい粒子で、水を含みやすいドロドロした土)の地盤で起こる現象です。
また液状化は、大きな地震が来た際、砂質土(さしつど=粘性土よりも大きい粒子で、サラサラした土)の地盤で起こりやすいと言われています。
今回は、住宅が地盤沈下する(家が傾く)代表的な原因である、「粘性土の地盤で起こる圧密沈下」と「砂質土の地盤で起こる液状化」について解説していきます。
目次
圧密沈下とは?長い時間をかけて家が傾いていく!?
圧密沈下とは、建物の荷重で土の体積が減少する(土が圧縮する)ことにより、地盤が沈下してしまう現象のことです。
圧密沈下は粘性土を多く含んだ地盤で起こりやすい現象です。
長い時間をかけて徐々に地盤が沈下することで、その上に建っている家が少しずつ傾いていきます。
粘性土は、粒子同士の間隔が広く、空気や水を逃しづらいという性質(保水性がある=水はけが悪い)を持っています。
田畑においては、空気や水を豊富に含んだ粘性土の地盤は欠かせません。
しかし、粘性土を多く含んだ軟弱地盤に家を建てた場合、家の荷重により、長い時間をかけてじわじわと土の中から空気や水が抜けていきます。
その結果、粒子同士のつながりは密になり、土の体積が減少して、家が傾いてしまいます。
「家⇔軟弱地盤」の関係は、「漬物石⇔漬物」をイメージすると理解しやすいかもしれません。
特に水田や沼地を埋め立てた土地では、家の重量による地盤の圧密沈下が発生しやすいと言えるでしょう。
このような土地に家を建てる場合には、事前に地盤改良や杭打ちなどの地盤沈下対策工事を行う必要があります。
地震が来た際に起こる液状化とは
液状化とは、大きな地震が来た際に、激しい振動により地盤がやわらかくなってしまう現象です。
液状化が起こると、地盤は支持力がなくなり、家が傾いたり倒れたりしてしまいます。
液状化現象は、砂質土の地盤で起こりやすいという特徴があります。
砂質土は、粘性土に比べて砂粒子が粗く、空気や水の出入りがしやすい(水はけが良い)という性質を持っています。
砂質土の地盤は、圧力を加えるごとに空気や水が抜けていきますが、粒子が比較的大きいため圧密沈下はほとんど起こりません。
砂粒子の隙間に水が含まれていたとしても、砂粒子同士が強い結び付きでバランスを保っているため、上部の建物を支えることができます。
しかし、地震により衝撃が加わると、結び付いていた砂粒子は崩れて水圧が上昇し、砂粒は水中に浮いた状態となってしまうのです。
その結果、水圧により地中の砂や泥は地上に押し出され、地中に残った砂粒子も水圧が失われることで地盤沈下が発生し、家が傾いてしまいます。
家が傾いていると感じたら専門業者に相談しよう
圧密沈下や液状化を起こしている土地では、家が傾きやすくなっています。
家は傾くと、屋根や外壁などの損傷のほか、基礎部分の弱体化が進むなど、被害が深刻です。
大きな地震が来た際は、家が倒壊してしまう危険性もあります。
また、傾いた家で生活を続けることで、めまいや頭痛など、健康障害を引き起こす可能性もあるのです。
家の傾きは、「隣家の外壁の角と見比べる」「屋根や外壁などに損傷がないか調べる」「雨漏り状況を調べる」など、建物のコンディションから確認できます。
【参考記事】 「【無料】自分でできる家の傾き調査18のチェックポイント」
【参考記事】 「プロが厳選!自分でできる家の傾きの簡易的な測り方8選」
【参考記事】 「スマホで家の傾きをチェック!簡単に使える『傾斜測定アプリ』6選」
万が一、家の傾きを確認できた場合は、被害が深刻になる前に、沈下修正の専門業者に相談することをおすすめします。
おわりに
今回は、家が傾く代表的な原因として、「圧密沈下」と「液状化」の2つをご紹介しました。
粘性土の地盤では、液状化は起こりにくいものの、長い時間をかけて家が傾く圧密沈下が発生する可能性があります。
また、砂質土の地盤では、大きな地震が来た際に、液状化を起こす可能性はありますが、平常時に圧密沈下はほとんど起こりません。
自宅が建っている地盤の特性について把握しておくと、きっと防災に役立つでしょう。
家が傾いてしまうと、建具が開きづらくなったり、外壁にひび割れが入ったりするなど、さまざまな不具合が発生します。
三半規管の狂いや自律神経の乱れなど、健康障害も深刻です。
家が大きく傾いていて今後の対策について考えている場合は、インターネットや書籍を参考にして沈下修正工事の情報を集め、知識を深めていきましょう。
このページの用語解説
圧密(あつみつ)とは
上部からの圧力により土の体積が減少することを圧密と言う。土の上に家などの重みがかかると、土内部の水と空気が搾り出されて引き締まった土ができる。引き締まった分、表層が沈下する。
砂質土(さしつど)とは
粘性土よりも大きい粒子で、水はけの良いサラサラした土のこと。強度はあるが、地震により水と砂が分離(液状化)すると地盤沈下を引き起こす。
地盤改良工事(じばんかいりょうこうじ)とは
地盤を強化する工事、もしくは建物の傾きを抑制する工事の総称。地盤沈下を抑制することが目的。家の傾きを修正するという意味合いは含まない。薬液注入工法、表層改良工法、杭工法などがある。
粘性土・粘土(ねんせいど・ねんど)とは
砂よりも細かい粒子で、水を含みやすいドロドロした土のこと。変形しやすいが、水とは分離しにくい。