覚えておくと役に立つ、軟弱地盤に関する5つの豆知識
目次
なぜ軟弱な地盤になるのか
- 人工的な埋立地で、昔は海、川、田んぼ、沼地だった
- 家の横に用水路がある
- 昔は谷間で水の通り道になっていた
- 過去に川の氾濫が起こった地区である
これらが原因として挙げられます。
水分量の多い地盤、地下水位の高い地盤は軟弱地盤の代表例です。
特に粘土層、砂層が多い地盤は、水分量が多ければ多いほど外部からの圧力によって変形しやすいため、建物の支持層としては適していません。
また、水分量は多くないとしても、
- 傾斜地に盛り土をして家を建てた
- 擁壁の上に家を建てている
という状態で家の傾きが発生しているケースがあります。
斜面=軟弱と一概に言うことはできませんが、人工的に盛り土をした場合は、土の締め固めを念入りに行った方が良いと思います。
盛り土の部分が軟弱なままで引き締まっていない状態は、地盤の強度が不均一だと言えます。
建物の不同沈下を引き起こす原因とならないように、しっかりと重機で転圧するかもしくは地盤改良工事を行う必要があるでしょう。
地震などの自然災害と軟弱な地盤の因果関係
大地震が発生した場合、地盤が軟弱な地区ほど家の傾き被害が大きくなる傾向があります。
特に地盤強度の不均一さは、家の傾きの大きさと深く関係しています。
地盤全体が均等に軟弱で家の重量もバランスが良い場合には、家全体が水平なまま沈下するケースもあります。(この場合は埋まっているガス管・水道管などが破損しなければ被害は軽微と言えます)
密度の低い地盤は、地震により揺らされた場合に土の粒子が動く余地が大きいと考えられます。
そのため、密度が低ければ低いほど揺れの影響を受けやすく、地盤沈下を引き起こす可能性が高いのです。
人的災害と軟弱な地盤の因果関係
対策を何もせずに土を深く掘ると、周りの地盤は必ず強度が落ちます。
新築マンション工事で地下室を作る場合などは、事前に近隣への影響を調査する必要があるでしょう。
他にも、地下水の過剰な汲み上げによって地盤内に空洞ができてしまい、地盤が軟弱化するケースもあります。
一般家庭の井戸では心配する必要はありませんが、近隣の工場が工業用水として汲み上げている場合は、近隣の地盤が軟弱化している可能性が考えられます。
一度液状化によって傾いた家は傷んでいる
家は柱、壁、床などがそれぞれバランスを保ち、全体の構造を安定させています。
しかし、液状化によって傾いた状態においては、それぞれのバランスが大きく崩れているのです。
この状態は家の構造にいびつな負担をかけ続けているため、今後の地震への耐震性が損なわれています。
築年数がかなり経過している木造の建物では、部分的な崩壊でも致命的になりかねません。
また、軟弱地盤内の埋設管(上下水道管、ガス管など)はもっとも揺さぶりの影響を受けやすく、これらライフラインの被害は生活に直結するため、安全・安心とはとても言えません。
家の傾きを直しておくかもしくは、液状化してしまった地盤を地盤改良しておくだけでも、大地震への減災対策につながると言えるでしょう。
地表より深さ何メートルまで軟弱なのか把握することは重要
地盤とは、さまざまな地層が折り重なるようにして構成されています。
それぞれの地層の厚みは、近い地区だったとしても均一ではなく場所によって違います。
関東大震災では、軟弱地盤の厚みがある地区ほど、建物の倒壊割合が大きいという結果になりました。
このことから、たとえコストの問題で軟弱な地盤を全て地盤改良できなかったとしても、軟弱地盤の厚みを減らすだけでも減災の効果はあると考えられます。
このページの用語解説
液状化現象(えきじょうかげんしょう)とは
砂と水が多い地盤が揺れると発生する。水と砂が分離して、水が噴き出してしまう現象。地盤沈下を引き起こす。
支持層(しじそう)とは
建物の重さを支えるのに十分な固さの地層のこと。一般の住宅と、ビルやマンションでは建物の重量が違うため、支持層と言える地層の深さは異なる。ビルやマンションの支持層は一般住宅よりはるかに深い。
地盤改良工事(じばんかいりょうこうじ)とは
地盤を強化する工事、もしくは建物の傾きを抑制する工事の総称。地盤沈下を抑制することが目的。家の傾きを修正するという意味合いは含まない。薬液注入工法、表層改良工法、杭工法などがある。
地盤沈下(じばんちんか)とは
土の中の隙間が埋まって表層の土地が陥没すること。地震による液状化でも発生する。
土留め(どどめ・つちどめ)とは
もともとの斜面に土を盛った場合、または土を掘ったときに出来る壁面などが崩れないように、木や鉄の板を縦に設置する工程のこと。山留め(やまどめ)と同じ意味。頑丈な鉄筋コンクリート製のものは擁壁(ようへき)と呼ぶ。
軟弱地盤(なんじゃくじばん)とは
建物を建てると今後悪影響がでると推定される強度の地盤のこと。明確な基準はない。
粘性土・粘土(ねんせいど・ねんど)とは
砂よりも細かい粒子で、水を含みやすいドロドロした土のこと。変形しやすいが、水とは分離しにくい。
不同沈下・不等沈下(ふどうちんか・ふとうちんか)とは
地盤沈下の影響で建物が傾いた状態のこと。地盤沈下がおきても、建物がストンと傾かずに沈下した場合は不同沈下とは言わない。
盛り土(もりつち・もりど)とは
斜面の土地で、低い部分に土を入れて平坦な地面を作ること。比較的軟弱な地盤になる。
擁壁(ようへき)とは
斜面や段差がある土地で、崩れてこないように土を留めて(とどめて)おくために作られた鉄筋コンクリート造の壁のこと。土留め(どどめ)の一種。