支持層とは?支持地盤の確認方法、N値の目安をわかりやすく解説!
地盤沈下によって、家が傾いてしまうことは決して珍しいことではありません。
大地震による液状化、隣地での大規模な建築工事など、地盤沈下の原因はさまざまです。
ただ、なにも外的な要因がないのに地盤沈下してしまうこともあります。
これは家が建っている地面の下、「地層」がしっかりしていないのが原因と言えるでしょう。
どうしたら傾かない家が建てられるのか。
それを見極めるポイントは「支持層」です。
そこで今回は、支持層とはなにか、支持層はどうやって調べるのか、支持層と家の傾きの関係について解説していきたいと思います。
目次
支持層とは「建物を支えるのに適した十分な固さを持つ地層」のこと
私たちが立っている地面は層(上下に複数重なっているという意味)になっています。
砂層、粘土層、レキ層などさまざまな種類があり、その土地によって層の順番や質が違います。
ちなみに、地層が複数重なり合っている状態を地盤と言います。
支持層という名前の層があるわけではなく、建築基準法においても明確な定義はありません。
支持層とは「特定の建物を支えるのに適した十分な固さを持つ地層」のことを指します。
言い換えると、「強度が高く、重量をかけても有害な変形が発生しにくい地層」のことです。
建物の種類や重さにより、支持層と判断される地層の強度・深さが変わります。
たとえば同じ土地だったとしても、
- 木造住宅(100t)では5mの深さにある地層が支持層
- 3階建てコンクリート造住宅(200t)では8mの深さにある地層が支持層
- 高層マンション(5,000t)では40mの深さにある地層が支持層
ということがあり得ます(土地によって変化するため、上記の数値は仮定です)。
支持層だと判断する基準とは?
支持層は強固な地盤のことだと理解しても、支持層だと判断する基準は何?という疑問が出てきますよね。
そこで出てくるのが、地盤の硬さを数値化した「N値」です。
地盤の硬さを表す「N値」とは?
「N値」とは、地盤の強度を数値化したものです。
ボーリング調査により算出します。
ボーリング調査(標準貫入試験)とは、63.5kgの重りを地面から76cm上から自由落下させ、ボーリング棒の先端に取り付けたサンプラー(棒)を地面から30cm下まで打ち込み、その回数を調べる作業のことです。
サンプラーが10回で打ち込まれたらN値は「10」ですし、40回必要であればN値は「40」です。
「N値」の数値が大きいほど固くて良好な地盤であると判断できます。
専門家でもない限り、上記のkgやcmを覚えておく必要はありません。
戸建住宅を建てる時には「換算N値」で判断するのが一般的
ボーリング調査は一般的な住宅を建設する時にはあまり使われません。
一戸建て建築時の調査であれば、簡易で安価なスウェーデン式サウンディング試験が一般的です。
スウェーデン式サウンディング試験(SS試験)とは、重りをつけたロッド(鉄の棒)を、回転させて地盤にねじ込み、ロッドの沈み方や回転数で地盤の硬さを調べる作業のことです。
すぐにロッドが沈むと軟弱な地盤と判断でき、沈まない場合は重りを追加して沈むまで試験を行います。
家を建てる範囲の四隅と中央、計5カ所での調査が標準です。
「重りの重さ」と「1mあたりの半回転数」の数値を公式に当てはめて、「換算N値」を算出します。
この換算N値をもとに、家を建てるのに適しているか、地盤改良が必要かどうかを判断するのです。
ボーリング調査とスウェーデン式サウンディング試験の違いとは
ボーリング調査の特徴
- 重りを自由落下させ、ボーリング棒の先端に取り付けたサンプラー(棒)を打ち込み、その回数を調べる
- N値を算出
- 費用が高額(スウェーデン式サウンディング試験の5~7倍)
- 広いスペースが必要
スウェーデン式サウンディング試験の特徴
- 重りをつけたロッド(鉄の棒)を、回転させて地盤にねじ込み、ロッドの沈み方や回転数で地盤の硬さを調べる
- 換算N値を算出
- 費用が安価
- 狭いスペースでも可能
万全を期するもしくは予算に余裕がある場合は、ボーリング調査を選択するとより安心です。
ただ、通常の一戸建てであればスウェーデン式サウンディング試験で問題ないかと思われます。
N値の目安は?一戸建てならどのくらいのN値が必要?
地盤調査を行うと、土の性質が粘性土であるか、もしくは砂質土なのかをある程度推測することができます。
粘性土の場合、一戸建てであればN値が「5以上」であれば問題ないと判断して良いでしょう。
下限のN値は「3」程度で、それより低いと家を建てる土地に適さないと言えます。
鉄筋コンクリート造(RC造)であればより高いN値が必要です。
砂質土の場合、上記の数値の2倍はないと安心できません。
N値が「0~10」の範囲内だと、大地震による液状化の懸念があります。
マンションの場合はN値の明確な基準がある
高層マンションの場合N値「50」の層(支持層)が5m以上、中低層マンションの場合はN値が「30」以上の層が3m以上ないと万全とは言えません。
一戸建てに比べて重量が段違いであるため、厚い支持層がないと地盤沈下を起こしてしまうからです。
マンションの場合は地盤の硬さだけではなく、層の厚みまで重要視されているわけです。
逆に言えば、マンションは強固な地盤の上に建っていますから、よほど大きな地震がない限り傾くことはありません。
支持層がない、あるいは深い場合はどうする?
地表よりすぐ下(1~2m)に支持層があれば、「良い地盤の土地」と言えるでしょう。
一方、支持層が地中深くにしか見つからない場合は、「地盤が悪い土地」と言えます。
支持層が深い場合は、表層を地盤改良して摩擦力を高めるかもしくは、支持層がある深さまで杭を打ち込むしかありません。
傾かない家のポイントは「支持層」!
地盤沈下(不同沈下)が起こらない家と起こる家の違い、「それは支持層で家を支えているかどうか」です。
地層は目で見えるものではありませんから、地盤の良し悪しは地盤調査をしない限り判断できません。
今住んでいる家が傾いている、あるいは今後の傾きを心配されている方もいらっしゃると思います。
家が建っている状態で新しい杭を打ち込み、基礎を支持層より支える工法や、その状態で傾きを直す工法も存在します。
地盤に不安を抱えているのでしたら、一度専門業者に相談されると良いかもしれません。
【参考記事】 ジャッキアップで家の傾きを直す工法(制振アンダーピニング工法)
このページの用語解説
液状化現象(えきじょうかげんしょう)とは
砂と水が多い地盤が揺れると発生する。水と砂が分離して、水が噴き出してしまう現象。地盤沈下を引き起こす。
支持層(しじそう)とは
建物の重さを支えるのに十分な固さの地層のこと。一般の住宅と、ビルやマンションでは建物の重量が違うため、支持層と言える地層の深さは異なる。ビルやマンションの支持層は一般住宅よりはるかに深い。
地盤(じばん)とは
地表からある程度の深さまでの、複数の地層の総称のこと。
軟弱地盤(なんじゃくじばん)とは
建物を建てると今後悪影響がでると推定される強度の地盤のこと。明確な基準はない。
粘性土・粘土(ねんせいど・ねんど)
砂よりも細かい粒子で、水を含みやすいドロドロした土のこと。変形しやすいが、水とは分離しにくい。
不同沈下・不等沈下(ふどうちんか・ふとうちんか)とは
地盤沈下の影響で建物が傾いた状態のこと。地盤沈下がおきても、建物がストンと傾かずに沈下した場合は不同沈下とは言わない。
レキ層(れきそう)とは
小石が多い地層のこと。水を通しやすい。沈下しにくい安定した固い地層で、支持層に適している。
よくあるご質問
- 支持層とはどのような地層のことですか?
- 支持層とは「特定の建物を支えるのに適した十分な固さを持つ地層」のことを指します。言い換えると「強度が高く、重量をかけても有害な変形が発生しにくい地層」のことです。建物の種類や重さにより、支持層と判断される地層の強度・深さが変わります。
- 何に基づいて支持層だと判断するのでしょうか?
- 地盤の強度を数値化した「N値」により判断します。ビルやマンションではなく一戸建ての建築時であれば「換算N値」で判断する場合もあります。