電話でのお問い合わせ メールでのお問い合わせ

仮住まい・引越し不要で家の傾きを直せる!?

柱状改良工法

柱状改良工法とは

柱状改良工法とは、軟らかい地盤を強くするために、地中に柱のような固い部分をつくる工事方法です。具体的には、地面に穴を開け、そこにセメントなどの固まる材料を入れて柱をつくります。これらの柱が地盤全体を支え、建物を安定させる役割を果たします。

地盤改良工法にはいくつか種類がありますが、柱状改良工法はその中でも最もよく使われる方法の一つです。地盤全体を改良するのではなく、必要な部分だけを柱状に改良するため、効率的に地盤を強化できる特徴があります。

この工法は1970年代に日本で実用化が始まりました。当時、都市の拡大によって建物を建てる場所が不足し、これまで避けられてきた軟らかい地盤や埋め立て地にも建物を建てる必要が出てきました。そのような背景から、安全に建物を支えるための地盤改良技術として柱状改良工法が開発されました。その後、機械や材料の改良によって施工の精度や効率が向上し、現在では住宅建設から大規模な構造物の基礎まで、幅広く利用されています。

柱状改良工法の目的と効果

軟らかい地盤には、大きく分けて二つの問題があります。一つ目は、建物の重さによって地盤が沈下してしまうことです。二つ目は、地震の際に地盤が液状化(地盤が水と砂が混ざったような状態になること)して建物が傾いたり沈んだりすることです。特に粘土や砂が多い地盤、水分を多く含む地盤、埋め立て地などでこれらの問題が起きやすくなります。

柱状改良工法は、これらの問題を解決するために、地中に固い柱を作ります。この柱は、上から建物の重さを受け止め、それを深い場所にある固い地盤まで伝える「杭」のような役割をします。また、柱と柱の間の軟らかい土と一緒になって、全体として強い地盤を作る効果もあります。

柱状改良工法によって期待できる主な効果は次のとおりです。まず、建物の重さを広い範囲で支えることができるため、地盤の沈下を防ぐことができます。また、地震の際には、固い柱が地盤の動きを抑え、液状化を防止することができます。さらに、斜面などでは土砂崩れを防ぐ効果もあります。このように、柱状改良工法は建物の安全性を高め、長期間にわたって安定した状態を保つことに貢献します。

柱状改良工法の種類

柱状改良工法には、使用する材料や施工方法によっていくつかの種類があります。大きく分けると、セメント系固化材を使う方法と砂を使う方法があります。

セメント系固化材による工法は、最も広く使われている方法です。地中にセメントと水を混ぜた固化材を注入し、その場所の土と混ぜ合わせて固めます。「深層混合処理工法」とも呼ばれ、代表的なものには「CDM工法」「DJM工法」「CI-CMC工法」などがあります。これらの工法は、大きな機械を使って深い場所まで改良できる点が特徴です。固化材の種類や配合は地盤の性質に合わせて調整され、強度や耐久性に影響します。

砂杭による工法は、地中に砂でできた柱(砂杭)を作る方法です。代表的なものに「サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)」があります。これは、地中に管を差し込んで振動させながら砂を入れ、砂を締め固めて杭を作ります。砂杭は水はけが良いため、特に液状化対策として効果的です。

また、改良する深さによって「深層混合処理工法」と「浅層混合処理工法」に分けられます。深層混合処理工法は地表から10メートル以上の深い場所まで改良するのに対し、浅層混合処理工法は地表から数メートル程度の浅い部分だけを改良します。浅層混合処理工法は、小規模な建物や道路の基礎などに用いられることが多いです。

柱状改良工法の施工手順

柱状改良工法を実施するには、計画から施工、検査まで一連の手順を踏む必要があります。具体的な施工手順は以下のとおりです。

まず、事前調査と計画を行います。地盤調査によって土の硬さ、種類、地下水の状態などを調べます。ボーリング調査や標準貫入試験などの方法で地盤の状態を詳しく調査し、その結果をもとに、どの程度の改良が必要かを決めます。改良する範囲や深さ、柱の径や間隔、使用する材料などを設計します。

実際の施工プロセスは、使用する工法によって異なりますが、セメント系固化材を使う深層混合処理工法の場合、一般的には次のような手順で進められます。

  1. 施工機械を設置する:専用の大型機械を改良する場所に配置します。
  2. 掘削と撹拌:機械の先端(撹拌翼)を回転させながら地中に差し込み、土を掘り起こします。
  3. 固化材の注入:掘削しながら、または掘削後に固化材を注入します。
  4. 混合:固化材と土を十分に混ぜ合わせます。
  5. 引き上げ:撹拌翼をゆっくりと引き上げながら、さらに混合を続けます。
  6. 次の改良位置へ移動:計画に従って機械を移動し、同じ作業を繰り返します。

施工後は、出来上がった改良体の品質を確認するための検査を行います。一般的には、改良体からサンプルを採取してその強度を測定する「コア採取試験」や、改良体の位置や形状を確認する「打音検査」などが行われます。これらの検査によって、設計通りの改良効果が得られているかを確認し、必要であれば追加の改良を行います。

柱状改良工法の特徴と適用条件

柱状改良工法は様々な地盤条件に対応できますが、特に効果を発揮する条件と、あまり適さない条件があります。

この工法が最も適しているのは、粘土質や砂質の軟らかい地盤です。特に、建物を建てると沈下が心配される場所や、地震の際に液状化しやすい場所に効果的です。また、湿地や海岸沿いの埋め立て地など、水分を多く含む地盤でも効果を発揮します。具体的には、沖積層と呼ばれる比較的新しく堆積した地層や、埋め立て地、干拓地などが柱状改良工法の適用に向いています。

建物や構造物との相性についても考慮が必要です。柱状改良工法は、住宅、マンション、商業施設など幅広い建物に用いられます。特に、比較的重量が軽く、荷重が均等に分散する構造物との相性が良いです。また、杭基礎と比べて工期やコストを抑えられるため、中小規模の建物に適しています。大規模な高層建築では、柱状改良工法と杭基礎を組み合わせて使うこともあります。

一方で、この工法にも制約や限界があります。例えば、硬い岩盤や巨礫(大きな石)が多い地盤では、施工機械の撹拌翼が入りにくく、うまく改良できないことがあります。また、有機質土(植物の腐敗物を多く含む土)や高有機質土(泥炭など)では、固化材との反応が悪く、十分な強度が得られない場合があります。さらに、地下水の流れが速い場所では、固化材が流されてしまうこともあります。これらの条件に当てはまる場合は、別の地盤改良工法を検討するか、柱状改良工法と他の工法を組み合わせる必要があります。

柱状改良工法のメリットとデメリット

柱状改良工法には様々なメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットもあります。他の地盤改良工法と比較しながら、その特徴を見ていきましょう。

項目 メリット デメリット
施工性 ・様々な地盤条件に対応可能
・既存の建物の近くでも施工できる
・比較的短期間で施工できる
・大型機械が必要で、狭い場所での施工が困難
・地中の障害物があると施工精度が落ちる
効果 ・沈下対策と液状化対策の両方に効果がある
・改良範囲を自由に設定できる
・長期的な効果が期待できる
・地盤全体を均一に改良するわけではない
・改良体と周囲の地盤の間に隙間ができることがある
経済性 ・杭基礎と比べてコストを抑えられる
・必要な部分だけを改良でき、無駄が少ない
・深い場所の改良は費用が高くなる
・固化材のコストが増加傾向にある
環境影響 ・振動や騒音が比較的少ない
・発生する廃土が少ない
・セメント系固化材の使用で土壌のアルカリ化の懸念
・地下水への影響の可能性

コストと工期の面では、柱状改良工法は比較的優れています。全面的に地盤を改良する方法や、コンクリート杭を打ち込む方法と比べると、材料費や工事期間を抑えられることが多いです。特に、改良率(地盤全体に対する改良体の面積の割合)を調整することで、効果とコストのバランスを取りやすい点が特徴です。工期については、一般的な住宅の場合、柱状改良工事は数日から1週間程度で完了することが多いです。

環境への影響については、柱状改良工法は比較的環境に優しい工法とされています。掘削した土を場外に搬出する量が少なく、振動や騒音も他の工法に比べて抑えられます。ただし、セメント系固化材を使用する場合、周辺の土壌や地下水のアルカリ性が高まる可能性があります。そのため、特に環境への配慮が必要な場所では、中性固化材の使用や地下水のモニタリングなどの対策が行われることもあります。

柱状改良工法の設計ポイント

柱状改良工法を効果的に実施するためには、適切な設計が重要です。主な設計ポイントとしては、改良体の配置パターン、改良率の決定、改良深さと径の設計などがあります。

改良体の配置パターンは、建物の形状や荷重の分布によって決められます。一般的には、格子状、千鳥状、壁状などのパターンがあります。格子状配置は、建物の荷重が均等に分布する場合に適しています。千鳥状配置は、改良体の間隔を広げつつも効果を維持できるため、経済性を重視する場合に用いられます。壁状配置は、建物の外周部や基礎の下に連続した壁のように改良体を並べる方法で、液状化対策として効果的です。建物の重要度や地盤条件に応じて、これらのパターンを組み合わせることもあります。

改良率(地盤全体に対する改良体の面積の割合)は、地盤の強度や建物の重さによって決まります。一般的には20〜50%程度の改良率が用いられますが、軟弱な地盤や重い建物の場合はより高い改良率が必要になることもあります。改良率が高いほど地盤の強化効果は大きくなりますが、その分コストも増加します。そのため、必要な安全性を確保しつつ、経済性も考慮して最適な改良率を決定することが重要です。

改良深さは、軟弱層の厚さや建物の基礎形式によって決まります。基本的には軟弱層の下にある固い地盤まで改良体を到達させるのが理想ですが、軟弱層が非常に厚い場合は、「フローティング工法」と呼ばれる方法で、軟弱層の途中までの改良にとどめることもあります。改良体の径(直径)は、一般的に60cm〜200cm程度で、使用する機械の能力や必要な強度によって決められます。径が大きいほど一本あたりの支持力は増しますが、施工の難易度も上がります。これらの設計要素は、地盤調査の結果や建築構造の専門家による計算に基づいて決定されます。

柱状改良工法の最近の技術動向

柱状改良工法は長い歴史がありますが、現在も技術革新が続いています。最近の技術動向としては、新しい施工機械や材料の開発、環境に配慮した工法、情報通信技術(ICT)の活用などが挙げられます。

施工機械の面では、より大きな径の改良体を造成できる高性能な撹拌翼や、より深い場所まで施工できる長尺アームを備えた機械が開発されています。また、小型で狭い場所でも施工可能な機械や、傾斜地でも安定して作業できる機械なども登場しています。材料の面では、従来のセメント系固化材に代わる新しい固化材の研究が進んでいます。例えば、高炉スラグやフライアッシュなどの産業副産物を活用した固化材は、セメント使用量の削減とリサイクル促進に貢献しています。

環境配慮型の工法も注目されています。中性固化材を使用して土壌や地下水へのアルカリ性の影響を抑える工法や、汚染土壌を柱状改良と同時に浄化する技術などが開発されています。また、発生する二酸化炭素を削減するため、セメント使用量を抑えた配合の研究や、二酸化炭素を吸収する特殊な固化材の開発も進んでいます。

さらに、ICT技術の活用も進んでいます。三次元位置情報システム(GNSS)を利用した高精度な施工管理や、センサーによるリアルタイムの施工データ収集、人工知能(AI)を活用した最適な施工計画の立案など、技術の進化によって施工の精度と効率が向上しています。また、拡張現実(AR)技術を用いて、地中の改良体の位置や形状を可視化するシステムも開発されています。

これらの新技術により、柱状改良工法はより効果的かつ環境に優しい方法で地盤改良を行えるようになってきています。今後も、持続可能な建設技術として、さらなる発展が期待されています。

ネットからの無料相談
傾きの範囲・家の広さ・築年数で傾きの修理費用が簡単にわかります!
簡単10秒見積フォーム