床沈下の基本
「床沈下」とは、建物の床が下に沈んでしまう現象のことです。家の中で床に段差ができたり、床が傾いたりすることで気づくことが多いです。床沈下は地盤(じばん)と呼ばれる、家の下の土地が弱かったり、水分を多く含んでいたりすることで起こります。
床沈下には「不同沈下」という言葉も関係しています。不同沈下とは、建物全体が均等に沈むのではなく、場所によって沈み方が違う状態を指します。例えば、家の南側だけが沈んで北側は沈まないと、家全体が傾いてしまいます。
床沈下が起こるしくみは、地面の中の土が圧縮されたり、水分が抜けたりすることで体積が減り、その上にある建物が下がってしまうというものです。
床沈下の主な原因
床沈下が起こる原因はいくつかあります。主な原因は以下の通りです。
原因の種類 | 具体例 |
---|---|
地盤の問題 | 土地が柔らかい(軟弱地盤)、盛土の上に建てた、粘土質の地盤など |
水に関する問題 | 地下水位の変化、雨水や排水の漏れ、水道管の破損など |
建物自体の問題 | 基礎工事の不備、建物の経年による劣化、重い物の長期設置など |
床沈下の兆候と発見方法
床沈下は少しずつ進行するため、早期に気づくことが大切です。以下のような兆候があれば、床沈下が起きている可能性があります。
- 床に段差ができる、または床が傾いている
- ドアや窓の開閉がしづらくなる
- 壁にひび割れができる
- 家の中を歩くとボールが転がる方向がいつも同じ
- 家具が傾く、または壁から離れる
床沈下を確認するには、水平器(水平かどうかを測る道具)を使ったり、床の上でビー玉を転がしてみたりする方法があります。また、定規で床と壁の間の隙間を測ることも有効です。
床沈下による影響とリスク
床沈下は放置すると様々な問題を引き起こします。まず建物自体への影響として、壁や柱にひび割れが生じたり、構造的な弱点になったりします。また、配管が破損して水漏れを起こすこともあります。
生活への影響としては、床の傾きによる歩きにくさや、ドアの開閉困難、家具の設置が難しくなるなどがあります。特に小さなお子さんやお年寄りにとっては、段差につまずく危険性も高まります。
床沈下を放置すると、時間の経過とともに症状が悪化することが多く、最終的には大規模な修理が必要になることがあります。早めの対応が大切です。
床沈下の調査・診断方法
床沈下が疑われる場合は、専門家による調査が必要です。調査は通常、以下のような流れで行われます。
まず、目視による確認で床の傾きや壁のひび割れなどを調べます。次に、水平器やレーザー測定器を使って床の傾斜角度を正確に測定します。さらに詳しく調べるために、建物の下の地盤調査を行うこともあります。
調査結果は、床の傾斜具合(1/100など、分数で表されることが多い)や、沈下の深さ(ミリ単位)で示されます。一般的に、床の傾斜が1/100(100cmで1cm傾いている状態)を超えると対策が必要と考えられています。
床沈下の補修・対策方法
床沈下の補修方法は、沈下の程度によって異なります。軽度の場合は、床下に束(つか)と呼ばれる支えを追加したり、既存の束の高さを調整したりする方法があります。
中度から重度の場合は、建物の基礎や地盤そのものを補強する工事が必要になります。代表的な工法としては、建物の下に鋼管やコンクリートの杭を打ち込む「アンダーピニング工法」や、地盤に特殊な液体を注入して固める「注入工法」などがあります。
予防策としては、建物を建てる前に地盤調査をしっかり行い、必要に応じて地盤補強をすることが大切です。また、建物周辺の排水をよくして水がたまらないようにすることも効果的です。定期的に床の水平を確認する習慣をつけると、早期発見につながります。