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内断熱

内断熱とは

内断熱は、家の壁の内側に断熱材を取り付ける方法です。断熱材とは、熱を通しにくい性質を持つ材料のことで、室内の温度を保ちやすくする働きがあります。

家の中から見たとき、壁紙や内装材の裏側に断熱材を設置することで、外からの暑さや寒さを防ぎます。これにより、冷暖房の効きを良くし、快適な室内環境を作り出すことができます。

家の壁の基本構造

家の壁は、外から順番に「外壁」「柱や間柱」「断熱材」「内装材」という層で構成されています。内断熱では、この柱と内装材の間に断熱材を入れ込みます。

断熱工法の種類と内断熱の位置づけ

断熱工法は、大きく分けて「内断熱」と「外断熱」の2種類があります。

工法 断熱材の位置 主な特徴
内断熱 壁の内側(室内側) ・日本の住宅で最も多く使われている
・工事がしやすい
・費用を抑えられる
外断熱 壁の外側(屋外側) ・建物全体を包み込むように断熱する
・効果が高い
・費用が高くなる

断熱の必要性

断熱は、家の中の温度を快適に保つために欠かせません。適切な断熱をすることで、以下のような効果が得られます:

  • 暖房や冷房の効きが良くなり、電気代やガス代を節約できる
  • 部屋ごとの温度差が小さくなり、ヒートショックを防ぐ
  • 壁の表面温度が安定し、結露(水滴がつくこと)を防ぎやすい
  • 外の音が伝わりにくくなる

内断熱の仕組み

内断熱は、家の柱と柱の間に断熱材を入れ、室内側から熱を守る仕組みです。壁の内側に断熱材を設置することで、外気の影響を受けにくくします。

断熱材の設置位置

内断熱では、壁の中で次のような順番で材料を重ねていきます:

層の順番
(外側から)
材料 役割
1層目 外壁材 雨や風から家を守る
2層目 木の柱・間柱 家の骨組みとなり重さを支える
3層目 断熱材 熱の出入りを防ぐ
4層目 防湿シート 水蒸気が壁の中に入るのを防ぐ
5層目 内装材(石膏ボードなど) 壁の表面を整える
6層目 壁紙など 仕上げとして見た目を整える

室内側からの断熱処理の特徴

  • 柱と柱の間に断熱材をぴったりと詰める
  • 壁の厚みの分だけ断熱材を入れられる
  • 電気のコンセントや配管がある部分は、断熱材を切り欠いて設置
  • 壁の隅や天井との境目にも隙間なく設置することが大切

防湿シートの大切な役割

防湿シートは、室内の湿気が壁の中に入り込むのを防ぐ重要な材料です。この役割が特に重要な理由は:

  • 室内の水蒸気が壁の中に入ると、冷たい場所で水滴となって結露が発生する
  • 結露が続くと、木材が腐ったり、カビが生えたりする原因となる
  • 一度壁の中で問題が起きると、発見が遅れて大きな被害につながることがある

防湿シートの正しい使い方

  • 断熱材の室内側に隙間なく貼る
  • シートとシートの継ぎ目は必ず重ねて専用のテープで止める
  • コンセントなどの開口部の周りは、防湿シートを丁寧に巻き込んで処理する
  • 天井や床との取り合い部分もしっかりとテープで止める

内断熱のメリット

内断熱には、多くの良い点があります。特に家の改修工事をする際に選ばれやすい工法です。

費用を抑えられる

  • 外壁工事が不要なため、足場を組む必要がない
  • 使用する材料の量が少なくて済む
  • 工事にかかる人件費を抑えられる
工事の種類 おおよその費用
(6畳間1部屋の場合)
備考
内断熱工事 15万円~25万円 壁のみの場合
外断熱工事 35万円~50万円 足場代などを含む

古い家でも工事がしやすい

すでに建っている家への工事が簡単にできることが、内断熱の大きな特徴です。

  • 室内からの工事だけで完了するため、天候に左右されにくい
  • 一部屋ずつ工事ができるため、予算に応じて少しずつ進められる
  • 住みながらの工事も可能(工事をする部屋だけ荷物を移動)
  • マンションでも工事ができる(外壁工事が必要ない)

家の外観が変わらない

内断熱工事は室内だけで行うため、外観に関する以下のような心配がありません:

  • 外壁の見た目はそのままで断熱性能を高められる
  • 家の形や特徴を損なわない
  • 瓦や外壁材など、お気に入りの外装はそのまま活かせる
  • 古い建物の歴史的な外観を保存できる

工事期間が短い

内断熱工事は、外断熱と比べて工事にかかる時間が短くなります。

作業内容 おおよその期間
(6畳間1部屋の場合)
内装材の撤去 1日
断熱材と防湿シートの設置 1~2日
内装材の取り付け 1~2日
仕上げ工事 1日

一般的な6畳間の場合、工事開始から完了まで4~6日程度で終わらせることができます。部屋の形や状態によって工期は変動しますが、外断熱工事(10日~2週間)と比べると短い期間で完了します。

内断熱のデメリット

内断熱工事には注意点もいくつかあります。工事を検討する際は、以下の短所もしっかり理解しておく必要があります。

壁の中で結露が起きやすい

内断熱では、壁の中で水滴ができやすいという弱点があります。これを「壁内結露」と呼びます。

  • 室内の湿った空気が壁の中に入り込む
  • 壁の中の温度が低い部分で水滴になる
  • 水滴により木材が腐ったり、カビが生えたりする可能性がある

室内が狭くなる

壁の内側に断熱材を入れるため、部屋の面積が小さくなってしまいます。

断熱材の厚さ 6畳間(約10平方メートル)の場合の面積減少
50ミリ 約0.4平方メートル
100ミリ 約0.8平方メートル

熱の通り道ができやすい

家の中に「熱の通り道」ができてしまう問題があります。これを「熱橋(ねっきょう)」と呼びます。

熱橋が起きやすい場所

  • 柱や梁(はり)の周り
  • 窓や出入り口の周り
  • 壁と床・天井がつながる部分
  • コンセントやスイッチの周り

熱橋による問題

  • その部分だけ温度が下がり、結露が起きやすい
  • 暖房や冷房の効きが悪くなる
  • 壁の表面に黒ずみが出ることがある

壁内結露への対策が重要

壁の中の結露を防ぐために、以下の対策が必要不可欠です:

対策 内容 重要度
防湿シートの正しい施工 ・隙間なく設置
・継ぎ目をしっかり処理
・破れないよう慎重に作業
非常に高い
適切な換気 ・換気扇の設置
・定期的な窓開け
・24時間換気の活用
高い
室内の湿度管理 ・除湿器の使用
・結露が起きやすい場所の確認
・湿度計での定期確認
高い

これらの短所は、正しい工事方法と適切な対策により、ある程度防ぐことができます。工事の際は、信頼できる業者に依頼し、確実な施工を心がけることが大切です。

内断熱で使用される材料

内断熱工事では、いくつかの種類の断熱材から選んで使用します。それぞれの材料には特徴があり、家の条件や予算に応じて最適な材料を選ぶことが大切です。

繊維系断熱材

グラスウール

ガラスを綿状にした断熱材で、最も一般的に使われています。

  • やわらかく、柔軟性がある
  • 価格が比較的安い
  • 軽い材料で扱いやすい
  • 防音効果もある

ロックウール

石を綿状にした断熱材で、火に強い特徴があります。

  • 燃えにくく、高い耐火性がある
  • グラスウールより重い
  • 価格はグラスウールより少し高め
  • 防音効果が高い

発泡プラスチック系断熱材

押出法発泡ポリスチレン(板状の断熱材)

  • 水に強い
  • 断熱性能が高い
  • 加工がしやすい
  • 比較的安価

硬質ウレタンフォーム

  • 最も断熱性能が高い
  • 薄い厚みでも効果が高い
  • 価格は高め
  • 専門の業者による施工が必要

断熱材の性能比較

断熱材の種類 断熱性能
(数値が小さいほど高性能)
価格の目安
(1平方メートルあたり)
耐久性
グラスウール 0.038~0.050 1,000~2,000円 15~20年
ロックウール 0.038~0.040 1,500~2,500円 20~25年
押出法発泡ポリスチレン 0.034~0.040 2,000~3,000円 20~25年
硬質ウレタンフォーム 0.023~0.026 4,000~6,000円 25~30年

断熱材の選び方のポイント

  • 予算に応じた選択
    • 費用を抑えたい場合:グラスウール
    • 性能重視の場合:硬質ウレタンフォーム
  • 工事場所による選択
    • 水回りの近く:発泡プラスチック系
    • 火気の近く:ロックウール
  • 施工条件による選択
    • 狭い場所:硬質ウレタンフォーム(薄くても効果が高い)
    • 複雑な形状:グラスウール(柔軟に対応できる)
  • 気候による選択
    • 寒冷地:性能の高い発泡プラスチック系
    • 温暖地:グラスウールで十分な場合が多い

施工時の注意点

内断熱工事を成功させるためには、正しい手順と細かな配慮が必要です。特に以下の点に注意して施工することが大切です。

防湿層を正しく設置する

防湿シートの施工は、内断熱工事の中で最も重要な作業の一つです。

施工箇所 注意点
シートの重ね合わせ ・上下左右10センチ以上重ねる
・必ず専用テープで止める
・しわを作らないよう丁寧に貼る
コーナー部分 ・角をしっかり覆う
・折り目をつけてから貼る
・隙間を作らない
壁の上下 ・床や天井までしっかり覆う
・端部は巻き込んで処理
・テープでしっかり止める

配管・配線周りの処理

  • 配管・配線の位置を事前に確認
    • 水道管の位置を記録
    • 電気配線の経路を確認
    • 換気設備の位置を把握
  • 断熱材の切り欠き方
    • 必要最小限の大きさに切る
    • 配管より少し大きめに切る
    • 切り口をきれいに整える
  • 隙間の埋め方
    • 小さな断熱材で埋める
    • 専用の充填材を使用
    • 隙間を作らない

壁と天井の接合部分の工事

熱が逃げやすい場所なので、特に丁寧な施工が必要です。

作業の順序 具体的な手順 重要な注意点
1. 下準備 接合部の清掃と点検 古い材料や埃を完全に除去
2. 断熱材の設置 壁と天井の断熱材を密着 隙間を作らない
3. 防湿シート L字型に防湿シートを貼る 角をしっかり覆う
4. 仕上げ 専用テープで補強 端部まで確実に止める

開口部(窓やドア)周りの施工

開口部は特に熱が逃げやすく、結露も起きやすい場所です。

窓周りの施工手順

  • 窓枠と壁の間
    • 隙間に断熱材をしっかり詰める
    • 防湿シートを窓枠まで延長
    • 専用テープで気密処理
  • 窓台(下枠)の処理
    • 水が溜まらない構造にする
    • 断熱材を水に強い材料で保護
    • 防水テープで補強

施工時の重要な確認事項

  • 作業前の確認
    • サッシの状態チェック
    • 既存の防水処理の確認
    • 雨漏りの有無の点検
  • 施工後の確認
    • 開閉がスムーズか確認
    • 水切りの取り付け確認
    • シーリングの仕上がり確認
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