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意匠設計

意匠設計の基本的な定義

意匠設計は、建物の外観や内部の見た目を考える設計の方法です。建物の形や色、使う素材などを決めていく仕事です。公園の休憩所や駅舎、マンションなど、私たちの身の回りにある建物の見た目は、すべて意匠設計によって作られています。

一般的な建築設計との違い

建築設計は大きく分けて「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つがあります。それぞれの違いを見てみましょう。

設計の種類 主な役割 具体例
意匠設計 建物の見た目や使いやすさを考える 部屋の広さ、窓の位置、外壁の色
構造設計 建物の強さや安全性を考える 柱や壁の太さ、基礎の深さ
設備設計 水道や電気などの仕組みを考える 配管の位置、照明の配置

意匠設計が必要とされる理由

意匠設計が必要な理由は大きく3つあります。

1. 快適に暮らすため

部屋の明るさや広さ、動きやすさなどを考えることで、住む人や使う人が心地よく過ごせる空間を作ることができます。

2. まちなみを美しくするため

周りの建物や自然と調和のとれた建物を作ることで、町全体の景観を良くすることができます。たとえば、京都の町並みのように、建物の高さや色を揃えることで、美しい景色を作り出すことができます。

3. 建物の価値を高めるため

見た目が良く、使いやすい建物は、長く大切に使われます。そのため、建物の価値が下がりにくく、維持していく費用も抑えることができます。古い建物でも、意匠設計によって新しい魅力を見出すことができます。

意匠設計の主な業務内容

外観デザインの検討

建物の外側の形や姿を考える仕事です。屋根の形や高さ、窓の大きさや配置、玄関の位置など、外から見える部分すべてを計画します。建物を見たときの印象は、主に外観デザインで決まります。たとえば、お寺のような和風の建物にするか、モダンな現代的な建物にするかといった検討を行います。

内装デザインの計画

建物の中の空間を考える仕事です。壁や床、天井の仕上げ、部屋の広さや高さ、窓からの光の入り方などを決めていきます。住む人や使う人が心地よく過ごせるように、以下の点に気を配ります。

  • 光や風が適切に入ること
  • 部屋と部屋のつながりが良いこと
  • 家具が使いやすく配置できること
  • 掃除や手入れがしやすいこと

色彩計画

建物全体の色使いを考える仕事です。色は人の気持ちに大きく影響するため、とても重要な要素です。

場所 色を選ぶときの考え方
外壁 周りの建物や自然と調和する色を選びます
居間 落ち着いて過ごせる色を選びます
子供部屋 明るく楽しい気持ちになる色を選びます
事務所 集中して仕事ができる色を選びます

素材選定

建物に使う材料を選ぶ仕事です。見た目の美しさだけでなく、以下のような点も考えて選びます。

  • 耐久性:長く使えること
  • 安全性:火事に強いこと、体に害がないこと
  • 手入れ:掃除や修理がしやすいこと
  • 費用:予算に合っていること

ゾーニング計画

建物の中の空間を目的に応じて区分けする仕事です。人の動きや使い方を考えて、空間を最も使いやすく分けていきます。

区分けの例 内容
住宅の場合 生活空間(居間・食堂)、寝室空間、水回り(お風呂・トイレ)を分ける
学校の場合 教室、運動場、職員室、図書館などを分ける
病院の場合 外来、入院病棟、手術室、検査室などを分ける
商業施設の場合 売場、倉庫、事務所、休憩所などを分ける

意匠設計の重要性

建物の価値向上への貢献

優れた意匠設計は、建物の価値を大きく高めます。たとえば、同じ広さの建物でも、意匠設計の良し悪しによって、売買価格や賃料が大きく変わることがあります。

価値を高める要素 具体的な内容
住みやすさ 日当たりの良い部屋、使いやすい間取り、十分な収納など
見た目の良さ 美しい外観、調和の取れた色使い、上質な素材など
維持のしやすさ 掃除がしやすい設計、傷みにくい素材の使用など
将来性 間取りの変更のしやすさ、設備の更新のしやすさなど

ブランディングとの関係性

意匠設計は、建物の印象を通じて、会社やお店のイメージを作り上げる重要な役割を果たします。

建物が伝えるイメージの例

  • 高級感:上質な石材を使った外壁、落ち着いた色使い
  • 親しみやすさ:木材を多用した温かみのある設計
  • 先進性:ガラスや金属を使った近代的なデザイン
  • 伝統:和風建築の要素を取り入れた設計

たとえば、高級ホテルなら格調高い外観を、子供向けの施設なら楽しい雰囲気の建物を作ることで、その場所にふさわしい印象を与えることができます。

機能性と美しさの両立

意匠設計の難しさは、使いやすさと見た目の良さを両方実現することにあります。以下の例のように、機能性と美しさは時に相反することがあります。

課題 機能性の要求 美しさの要求 解決方法の例
窓の設計 たくさんの光を取り入れたい 外観の調和を保ちたい 窓の位置や大きさを工夫し、建物全体のバランスを整える
収納計画 十分な収納スペースが必要 すっきりとした見た目にしたい 壁面に収納を組み込み、扉のデザインを工夫する
設備の配置 空調機器の設置が必要 外観を損なわない 目隠しの工夫や、建物と調和するカバーを設置する
動線計画 効率的な移動を可能に 空間の美しさを保つ 通路を曲線で計画し、自然な流れを作る

優れた意匠設計は、これらの相反する要求を上手く解決し、使う人の満足度を高めます。建物は長く使われるものだからこそ、機能性と美しさの両方を大切にする必要があります。

意匠設計で考慮すべきポイント

建物の用途との整合性

建物は使う目的に合わせて設計する必要があります。同じ広さの建物でも、用途によって全く違う設計になります。

建物の種類 重視すべき点 具体的な工夫例
住宅 くつろぎやすさ、生活のしやすさ 家族の人数に合わせた広さ、十分な収納、使いやすい台所
保育園 子供の安全性、遊び場の確保 角の少ない設計、見通しの良さ、傷つきにくい素材
飲食店 お客様の快適さ、作業効率 適切な席の間隔、厨房との動線、雰囲気作り
事務所 仕事のしやすさ、打合せスペース 適切な明るさ、集中できる環境、会議室の配置

周辺環境との調和

建物は一つだけで存在するものではありません。周りの環境に合わせた設計が必要です。

  • 建物の高さ:近隣の建物とバランスを取る
  • 色使い:地域の特徴や景観に合わせる
  • 日当たり:隣の建物に影を落とさない工夫
  • 騒音:周りの住宅への配慮
  • 緑化:地域の自然との調和

法規制への適合

意匠設計では、様々な法律や規則を守る必要があります。主な規制には以下のようなものがあります。

規制の種類 内容
建築基準法 建物の高さ制限、日影規制、防火規制など
景観条例 色彩制限、看板の大きさ、緑化の義務など
地区計画 建物の用途制限、外壁の位置、形態意匠の制限など
バリアフリー法 段差の解消、手すりの設置、広さの確保など

コストバランス

建物の予算内で最大の効果を得られるよう、費用対効果を考えながら設計を進めます。

項目 検討内容
材料費 見た目と耐久性のバランス、適切な材料の選択
工事費 作りやすい形状の採用、工期の短縮
維持費 掃除や修理のしやすさ、省エネ性能
将来費用 修繕や改修のしやすさ、設備の更新

メンテナンス性

建物は作った後の手入れが大切です。掃除や修理がしやすい設計を心がけます。

  • 清掃のしやすさ
    • 掃除道具が届く高さ
    • 汚れにくい素材の使用
    • 清掃用の水栓の適切な配置
  • 点検のしやすさ
    • 設備の点検口の確保
    • 屋上や外壁の点検経路
    • 照明の電球交換のしやすさ
  • 修理のしやすさ
    • 部品の交換がしやすい設計
    • 材料の入手のしやすさ
    • 工事スペースの確保

意匠設計の実務プロセス

基本構想

建物を作るための最初の段階です。建てる人の希望や建物の目的をもとに、大まかな計画を立てます。

検討項目 内容
敷地調査 土地の広さ、形、日当たり、周りの建物などを確認
要望の整理 必要な部屋の数、広さ、使い方などを確認
予算の確認 建物にかけられる費用の確認
法規制の確認 建てられる建物の制限を確認

基本設計

基本構想をもとに、建物の具体的な形を決めていく段階です。この段階で建物の大きな方向性が決まります。

  • 配置計画
    • 建物の向き
    • 出入口の位置
    • 駐車場の配置
  • 平面計画
    • 部屋の配置
    • 廊下や階段の位置
    • 窓や扉の位置
  • 外観計画
    • 建物の形
    • 屋根の形状
    • 外壁の仕上げ

実施設計

基本設計で決めた内容を、実際に建てられる図面にする段階です。職人さんが見て建物が作れるように、細かい部分まで決めていきます。

図面の種類 記載する内容
配置図 建物の位置、高さ、道路との関係
平面図 部屋の大きさ、扉の向き、設備の位置
立面図 外観の形、窓の大きさ、外壁の模様
断面図 天井の高さ、床の構造、階段の寸法
詳細図 建具の形、手すりの寸法、造作家具の図面

施工管理での役割

建物を実際に建てる工事の段階でも、意匠設計者は重要な役割を果たします。

管理項目 具体的な仕事
設計意図の伝達 図面の説明、細部の決定、材料の確認
現場での確認 寸法のチェック、色や材質の確認、仕上がりの確認
変更への対応 予期せぬ問題への対応、設計変更の検討
品質管理 見本の確認、出来上がりの検査、手直しの指示

こうして建物ができあがるまで、意匠設計者は建物の見た目や使いやすさを守る重要な役割を担います。最後まで設計の意図が正しく実現されるよう、工事の様々な場面で関わっていきます。

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